噂をすれば影がさす (Page 2)
「それよりさ…なんかあっちの方から物音しない?」と、廊下突き当り左側の方を指差した。
いつものすきま風だろ、と笑って返すと真剣な表情で「いや、明らかに人が居る音」と言う。
たしかあっちの方は部活棟で、1階部分は使われていなかったはずだ。
耳をすませてよく聞くと確かに物と物がぶつかるような音と足音がする。
「掃除でもしてるんじゃね?」
「お前、知らないのか?」
話を聞くと、あくまで噂レベルに過ぎないのだがあそこらへんにヤリ部屋と言われている部屋があるらしく、カップルが情事にふけっているらしい。
「はぁ? そんなエロゲみたいなことあんのかよ」
「だからあくまで噂なんだよ」
「…で? それがもしかして、ってこと?」
「それはわからないけど…」
「だったら直接見に行こうぜ。それで解決」
馬鹿馬鹿しいと思いながら物音がする方へと足を進める。
使われていない階なだけあってホコリっぽく、さらに建物の古さを感じさせる。
各部屋のドアは木製の引き戸でできており、小さな擦りガラスが付いているだけで部屋の内部まではよく見えない。
「…おい、ここじゃね?」
ひそひそ声で光博が天文部と書かれた部屋のドアを指さした。
ドアに耳を当ててみる。
するとどう考えても男性器を咥え、しゃぶっているとしか思えない粘着音が聞こえた。
「おい、マジかよ…」
同じくドアに耳を当てていた光博もそう思ったらしい。
それに微かに男の吐息も聞こえる。
ふと俺は気が付いた。
古い引き戸タイプのドアなのできちんと閉まらず、微かに隙間があることに。
俺は恐る恐る片目をつむり部屋の中を覗いてみた。
そこには全裸の男が机に後ろ手を付き、バキバキに勃起した男性器をしゃぶらせている…これまた全裸の男が居た。
…背筋が凍る。
俺は無言でドアのすきまを指差し光博にも覗け、と目で訴えた。
同じように思ったのだろう、顔を真っ青にさせながら“あのふたり、俺と同じ学部の人”とスマホのメモ帳機能を使い画面を見せてきた。
“でもふたりとも彼女が居るはずだよ”
では今の状態はなんと説明すればよろしいのか?
ふたりとも浮気をしているのか?
そもそも男同士でヤっているなんて…
ぐるぐると色んな考えが頭を巡る。
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