月明りと媚薬の罪と罰 (Page 5)
―――剣戟(けんげき)が、響いていた。
煙る大地に、ぶつかり合う影がみえる。
薬を盛られ、多くを失った。宣言通り、これ以上は看過できないと報復へと打って出た。それもまた、人間の思惑通りではあったのだろう。
だが腹の虫は収まらず。ドス黒い怨嗟(えんさ)が渦巻き、戦争と相成る──。
それを遠巻きに相棒と肩を並べ、見やる。
「なぁルカ。なんて、空しいんだろうな」とぽつりと呟いた。
「オレはこんなの、望んじゃいなかったんだぜ。ああ、本当だとも。ただお前とずっと、今まで通り―――」
ざあ、と強い風が吹き砂が舞い上がった。
──剣戟(けんげき)は止まない。
もう何にも邪魔されず、愛おしさだけを顔に浮かべ、2人は手を握りあい、もたれ合う。
美しい毛並みが風にそよぎ、キラキラと太陽の光を反射させる。
それが、朽ちるまで──。
Fin.
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