夜に咲く恋の華 (Page 3)
「思い出したんだろ」
「…まあね」
「約束を果たしに来た」
「ふっ、余計なお世話だよ、俺これで男娼やめる予定だったからさ」
その言葉にキースは首を傾げる。
「俺、もう死ぬんだ」
「は!?」
すました顔のキースが驚くのを玲央は少し面白く感じた。
「病気なのか?」
「いいや、わかるだろ?この仕事続けてても先はないんだよ」
「だから俺が」
「いいんだよキース、もういいんだ」
「いいや俺がよくない!」
突然声を荒げるキースに対して、冷ややかな表情の玲央。
その表情が余計キースの怒りに油を注ぐ。
「わかった」
「?」
「お前が死ぬというなら俺がお前をもらう」
「は?」
「いいだろ、どうせ死ぬならもらっても」
「えっちょっまっ」
「そうと決まればお前を買いきってくる」
「はぁっ!?」
キースは足早に着替えると玲央にも服を着させ、抱き上げる。
玲央はふわりと香る香りに懐かしさを覚える。
と同時に「好きだ」というあのときの告白を思い出し、どきっと胸を高鳴らせる。
「あぁもう」
キースの強引さに負けたように玲央は呟く。
「勝手に攫っていけばいい…!」
芽生えた恋心に目を背けるように玲央はキースの胸に顔をうずめた。
その様子をみたキースは優しく微笑むと攫うように宿を出た。
*****
それから玲央はキースと一緒に暮らすようになった。
お屋敷に連れていかれ、キースの婚約者として紹介され。
まるで嵐のように過ぎる日々の中、キースに愛されて。
今まで満たされなかった玲央の胸が温かいもので満たされた。
玲央の口から「愛してる」の言葉がでるのもきっと遠い日ではないだろう。
Fin.
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