搾精救済!正義のヒーロー、アクメンズ (Page 3)
悪しき敵、“ヌメリゲ”との戦闘は、俺1人で行っているも同然だった。青海の貧弱な身体が肉弾戦で通用するワケがない。彼を守るため俺が盾となり、負傷するのも決まって俺だった。しかし、あらゆるデータバンクにアクセスし、怪人の分析を行っている青海を失ってしまえば、国が追っている闇組織にはたどり着けない。だから俺は彼を援護し続けていたというのに…どうやら元々同性にしか恋愛感情を抱けない青海は、この状況に変な勘違いを起こしてしまっていたようなのだ。
3カ月前のあの日。作戦会議を終えた俺はツレナイ態度を取り続ける青海と親睦を深めようと、彼を引きずるようにしてバーに連れ込んだ。酒でも酌み交わせば、コイツも閉ざしている心を開くかと思ったのだが…青海は酒に弱いらしく、突然バーカウンターに突っ伏した。さらに、おいおいと泣き出したかと思えば『貴様が好きだ』と漏らしたのだ。当初俺は、この男が目を真っ赤にし、鼻水まで流す滑稽(こっけい)な姿を面白がって、『俺も好きだぜ?』とノリで返してしまったのだが、俺の嘘の告白を真に受けた青海により、翌日更衣室に押し込まれ――唇を奪われてしまえば…彼が本気であることがわかった。
たった2人で構成されるアクメンズが仲違(なかたが)いしてしまえば、街を守ることができない。俺は“正義のため”に青海との交際を決めたのだった。まさかボディービルダーである俺が、2回りも小柄な男に抱かれる立場になるとは思いもせず。
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『緊急要請、緊急要請――A町〇〇公園裏路地にあるプロレス道場にて“ヌメリゲ”出現。男性1名が襲撃されていると通報あり…アクメンズ、ただちに出動せよ!』
不穏な空気が漂う室内に、壁側に設置されたスピーカーから緊迫した声が響く。
俺たちが追っている悪の組織“Secret sperm society(シークレットスパームソサエティ)”は、街の空気に溶け込むようにある怪人を放ち、屈強な男を見つけ出しては服を剥ぎ…“元気で優秀な精子”を搾取していた。彼らの目的は不当な遺伝子交配で、高値になる精子を探し求めているのだ。
この精子搾取のために野放しにされている怪人こそ、俺らが死闘を繰り広げている“ヌメリゲ”である。空気に溶け込む特性を持つヌメリゲは、好みの男性を見つけると、実体化する。その姿はゲテモノそのもので――スナイソギンチャクを改造したと噂の黒い縞の混じった土色の皮膚。凌辱的に男の急所を責めるための触手は50本生え、その手を穴という穴に突っ込む。奴に隙を与えたら最期。尿道に潜り込まれ、精魂尽き果てるまで精子を絞り取られ…乳管さえも開発された挙句、廃人となるまで犯され続けてしまうのだ。
「痴話喧嘩している場合じゃないな、真司。現場へ急ぐぞ!インテンスエクスタシー!!」
青海が自身の腕に巻きつけたブレスレットに向かって叫べば、その身体は光に包まれ…鮮やかなブルーのパワースーツ姿となる。このスーツは伸縮性に優れているだけではなく、対怪人用に精力増強まで施してくれる優れモノなのだ。
「誰が“痴話喧嘩”なんか…帰ったら覚えておけよ、青海!!インテンスエクスタシー!!」
文句を言いながら俺も青海と同じ効能をもつ赤のスーツに変身し、俺たちは現場へと急行したのだった。
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