魔法族の強欲 (Page 2)


「このままじゃ魔力が途絶える危険性がある」

…だからケイリンにたくさん子供を産んでほしい。
最低10人は。

ふと頭の中に入って来た言葉。
これも僕の強すぎる魔力で相手の思っていることが口に出さなくてもわかってしまうのだ。

…最低10人だって?

「ちょっと待ってください。相手は? 僕、お付き合いしてる人なんて居ませんし…」

そう言いきるとなんとも言えない薄ら笑いで

「だから色んな魔法族と…ね。君が優秀だからって産まれる子供も優秀だとは限らないからね。いろいろ試して…みないとね」

*****

1人目の相手はグリーンの目が印象的な僕より少し年上の人だった。

産まれながらにして上流階級の魔法族は態度が傲慢な人が多い。

だけどこの彼はものすごく謙虚で腰が低い人だった。

「あっ、あの…僕なんかで…」

優秀な魔法族を産むための機械になるしかない。
僕は受け入れなければいけない。そう言い聞かせた。
深夜、僕の寝室で全裸の男がふたり肌を合わせている。
もちろん愛情などない。

「あっ、んんっ…」

彼は遠慮しているようだったので僕はせめてもの演技で、“あなたとのセックスは気持ちいいですよ”感を出すためにたくさん声を出し、身体をくねらせた。

「やん…僕、君との子供…ほしい…あぁ、んんっ! 出してぇ…!」

こんな僕でもいいのか、というためらいの言葉が頭の中に入って来たのと同時に彼は僕のナカに射精した。

その後、グリーンの目が印象的な彼とは何度もセックスをしたが僕は妊娠しなかった。

それならばと2人目、3人目と次々と相手を変え子作りをさせられたが、身ごもることもなくただ気が狂いそうになっただけだった。

「魔力は強いのに繁殖力は弱いんだな」と、心ない言葉をギルバートさんに投げ掛けられたとき、僕は死にたくなった。

子供を授かれる魔法があったらいいのに。
そう思いながら日々を過ごした。
…いつになったらこの地獄から脱け出せるの?

*****

3人目でも駄目なら、と次の候補…4人目の相手が決まったらしい。
らしい、というのは肌を合わせる直前まで相手のことは一切知らされずいきなり子作りをさせられるからだ。

「ケイリン、今度こそ妊娠しろよ」

夜、寝室に向かおうと廊下を歩いていたとき、すれ違いざまにギルバートさんに耳打ちされた。

ああ、4人目の相手が居るのか。

寝室のドアを開ける。

この頃の僕はもう感覚がおかしくなっていた。

「…よう」

血の気が引いてゆく。
だってそこに居たのはよく知っている相手だったのだから。

「なっ…なんでリゲルなんだよ…は?」

リゲルとは僕の実の兄…だ。

「ちょ、ちょっと待ってよ。僕達兄弟だよ? 同じお腹から産まれてきたんだよ?」

「だからなんじゃねーの? 近親者だから似た遺伝子を持ってる」

「だからって…リゲルは抵抗ないの!?」

リゲルは鼻で笑うだけだった。

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