魔法族の強欲 (Page 4)
冷や汗も出てくる。
ガヤガヤと慌てる周囲を余所に今居る魔法族では最年長のロンが冷静に周囲の人間に声を掛ける。
「この子をベッドに運んで」
僕の方へと歩み寄り、こう耳打ちをした。
「君、妊娠してるんじゃろ? 無理はいかんよ」
世界がすべてモノクロになって見えた瞬間だった。
*****
「ようやくできたか」
その後のことはよく覚えていないが、医師から正式に妊娠を告げられたことは嫌でも記憶にこびりついていた。
「しかし、ロンさんに言われて気が付くなんて」
クスクスと笑うギルバートさん。
どうやら僕は「妊娠なんてしていない!」などと言って暴れたらしい。
「やめてください…」
妊娠しているという事実を知ってから体調がとても悪く1日中ベッドで寝て過ごしている。
子供を産むということを受け入れはしたが、自分の兄との子供を、とは思ってもいなかったからだ。
「具合が悪いんです。出てってくれませんか」
「はは、まぁ、元気な赤ちゃん産んでくれよ」
ドアが閉まる音が聞こえた途端、涙が溢れでて止まらない。
「なんで…なんでよりによってリゲルの子なんだよ…! 他人の子じゃないんだよ…っ!」
やけくそになり手の届くところにあった置き時計をドアに向け強く投げつける。
「うあああああああああ!」
その日、夜が明けるまで大声を上げ、泣き叫んだ。
*****
それから時が過ぎ、臨月を迎えた。
乗り気ではなかったが医師からお産をスムーズに行うために散歩をするように言われたため、大きくなったお腹にしんどさも感じながら街中を当てもなく歩いていた。
「あっ…あの…もしかして」
向かいには見覚えがある男が立っていた。
初めて肌を合わせたグリーンの目が印象的だった男だ。
「…ああ、そうだな」
今の姿を見られ、気まずさを感じてしまう。
「噂には聞いてましたが、おめでとうございます」
「ああ…ありがとうございます」
「…? どうかされましたか?」
暗い表情でもしていたのだろう、怪訝な顔をされてしまう。
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