騎士陥落〜永遠の檻の中〜 (Page 3)

「はは、腑抜けた顔しやがる。騎士団長が聞いて呆れるってもんだ」
「黙れ」
「迫力無い顔で言われてもなぁ。フン、まぁいい…。おい!」

 コーエンは俺の言葉を鼻で笑い飛ばすと、誰かに声を掛ける。どうやら何人かの部下が控えていたらしく、コーエンの合図で3人ほどの男たちが僕の身体を押さえつけた。

「何をする!触るな…ッ!」

 どれだけ抵抗の声をあげてもコーエンの部下たちは無反応で、石造りの床に俺の身体をうつ伏せで押さえつけるだけだった。
 剣も無い状態で、明らかに俺より力の強い男たち複数人を相手にこの場を切り抜けることはほぼ不可能に近い。
 ーー外から助けが来ない限りは。

「…あぁあ!!な、に…!?」

 考えを巡らせていると、背中に衝撃が走った。おそらく一本鞭による痛みだろう。
 拷問の訓練は当然受けているが、ここまで弱りきった身体では耐え抜けるか分からない。

「〜ッ!…ひぐッ!う…ッ」
「ハハ、声上げねぇように必死に歯ァ食いしばってんのか!かわいいもんだ!」
「〜ッ!!んん…!クソ…ッ!」

 続けて、何発も背中を打たれた。薄着のため、鞭による痛みが直に伝わる。それが肌に染みるような寒さによりかさ増しされ、また気を失いそうになった。
 初めて味わうような恥辱の中で、俺を正常なまま繋ぎとめてくれていたのは、脳内に浮かぶルイの笑顔だった。

*****

「ぐ…ぁ…っ」
「寝るんじゃねぇよ。ああそうだ。ここらで騎士団長殿が目が覚めるようなサプライズをしてやろう」

 もう、屈強な男たちの拘束の下で抗えるほどの力は俺に残されていなかった。そんな中、コーエンの心底楽しそうな声が冷たい部屋の中に響き、俺は芋虫が這いずるようなうつ伏せの姿勢のまま、何ごとかと少しだけ顔を上げる。

 廊下からコツコツと靴音が聞こえ、やがてその音の主が思い鉄の扉を開けて姿を現した。

「ノア、待たせたね」

 そこにいたのは、俺が心から助けを望んでいたルイだったのだ。

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