騎士陥落〜永遠の檻の中〜 (Page 4)

「…ルイ…」
「おい、喜べよ。お前、こいつが来るのを待ち望んでいたんだろう?」

 恋しかったはずのルイの姿。喜べないのは、彼がこの場に似つかわしくない笑顔を浮かべていたからだった。その美しい笑みに、なぜか恐ろしささえ感じる。
 しかも、ボロボロの俺と対照的に、ルイの服装は全く綺麗なものだった。傷ひとつなく、ビロードのように滑らかなブロンドの長い髪も乱れていない。

「コーエンの言う通りだ。ノア、僕のことを待っていたんだろう?感動の再会じゃないか。もっと泣いて喜んでくれよ」

 ルイはしゃがんで、俺の乱れた髪をすくように優しく撫でる。大好きなその仕草も、今は絶望を駆り立てるものでしかなかった。
 やっとの思いで起き上がり、しゃがんでいるルイと目線を合わせる。彼は相変わらず、穏やかに笑っていた。

「ルイ、他の奴らはどうした…俺たちの国は…」

 俺の問いにルイは、呆れたようにハァと深い溜息をつく。

「僕のことよりそっちを気にするんだね。もはや、どうだっていいことじゃないか」

 俺はその一瞬で、ルイが俺と祖国を裏切ったのだと理解し、咄嗟に掴みかかった。

「貴様…ッ!」

 ルイはいとも簡単に俺の拳を受け止め、俺の腕を引いて抱き締めてきた。
 当然、俺は身体を離そうとするが力が入らない。それどころか、浅はかな身体は愛する恋人に抱き竦められることで僅かに熱を持ち始めていた。

「離せッ!!離せ、裏切り者…ッ!信じてたのに…なんでこんなこと…ッ!」
「逆に、なぜ君は自分を粗雑に扱う連中ばかりの国に忠誠を誓っていたの?あんなに苦しんでまで守る価値があったのかな」

 ドクンと心臓が跳ねた。

「僕はそうは思わなかったから、国じゃなくて君を取ったっていうだけの話だよ。だからコーエンの死を偽装して、水面化下で一緒に動いてもらっていたのさ」
「そんな…」

 黙って聞いていたコーエンが、相変わらず楽しそうに会話に割り入ってきた。

「ついさっき、お前のところの王の居城が陥落したと連絡があった。騎士団も、このオリヴィエを中心に寝返った連中によって壊滅だとよ」

 目の前が真っ暗になる。
 こうなることを、ルイは最初から望んでいたのだろうか。それとも、俺が彼を狂わせてしまったのだろうか。

「言っただろう?君を護って、戦争も止めてみせるって」

 ルイはそう言って、僕に深く口づけた。

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