フォレスト・イン・レイニーデイ (Page 3)

*****

 これは現実だろうかと思わず疑ってしまう光景が、俺の前に広がっている。

「あっ、ぁ…!んぅ、ぁん…っ、さのくんっ、あ…」

 何も身に纏っていない生まれたままの姿をした森野さんが、俺の身体に跨り腰を振っていた。
 普段の慎ましやかな彼からは考えられない乱れた姿に、俺は目眩を覚えつつも快楽に身を委ねる。

「もりの、さん…っ、すごい、きもち…ぅっ、ぁ」

 生まれて初めて味わう感覚に身を震わせながら、僕は舐め回すように森野さんの身体を眺めた。
 白い肌は上気し、眼鏡越しに見える目は潤んで、薄い唇から漏れる切ない嬌声は、普段の低い声の存在感を霞ませる。

「いや…っ、あんまり、見ないで…っ、んん」

 鼻にかかる声で、森野さんは言う。今更、恥ずかしそうに顔を覆うような仕草をしたって遅いというものだ。
 
「森野さん、僕のこと名前で呼んで…っ」
「ぁ、あ!」
「ん…っ、ねぇ、景市さん…!」

 腰を掴み突き上げながら耳元でそう言うと、森野さんーーいや、景市さんの中は大きくうねった。顔は泣いているけれど、どうやら嬉しいようだ。
 
 僕は調子に乗って腰を動かしながら、嬌声をあげ続ける彼にまた囁く。

「景市さん、僕の声好きなんだよね…っ、ねぇ、今どんな感じ…?」
「んうぅ…っ、あ、あぁ…っ、す、すご…、あ…」
「教えてよ…っ!」
「んぁ!?あ、ぁ…っ」

 少し意地悪な質問をして、まともに返答できずにいる彼を目覚めさせるように奥を突いた。

「あん…っ、すごい、佐野く…葵の声…聞くと、身体じんじんして…っ」
「…」
「…今は俺だけが、この声独り占めしてると思うと…っ、すごく、感じちゃ…っ!ぁ、あっ」
「…景市さん!」

 僕は耐えきれず、体勢を変えて景市さんを組み敷いた。いわゆる正常位で、彼の熱い胎内を味わう。
 
 あまりの気持ちよさに、脳内の思考回路が次々に焼き切れる感じがした。優しくしたいけどそれも叶いそうにない。僕はただ欲望のまま、景市さんの細い腰を掴んで射精に向かっていった。

「イく…っ、景市さん、僕、イっちゃうよ…!」
「あんっ、んあ、良いよ、葵、俺の中でイって…っ!あ、あぁあ!」

 景市さんは一際大きな声を出した後、僕を強く締め付けながら絶頂を迎えた。僕もそれに釣られて、ゴム越しに彼の中で射精する。
 
 僕たちは、しばらくお互い自分の息を整えるのに必死だったが、やがて顔を見合わせて笑った。

「…僕、まだ信じられないよ。景市さんとこんなことしちゃったなんて」
「俺だって、まさか君とこんなことになっちゃうなんて思いもしなかった」
「誘ったのは貴方じゃないですか」
「ふふ、確かに…」

 帰ったら曲を書いて、明日からまた路上で歌おう。
 今度は隠れないで真正面で僕の歌を聴いてね、と言うと、景市さんはいつもの調子で穏やかに笑った。

Fin.

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