道化師のギャロップ~上がって落ちて突き上げて~ (Page 2)
そのまま季節は流れていって、冬も終わりが近づく頃。
「もうすぐ、卒業ですね」
弥耶さんが受験でしばらく忙しくしていて、久々に彼の家にいたとき、ぼそりと口をついて出た言葉。
彼は黙って頷く。
入試の結果はまだ出ていないが、弥耶さんのことなら心配ないだろうとみんな思っている。
「俺のこと、追ってくる?」
問いかけてくる弥耶さんは少し不安そうで、また初めて見た顔だった。
俺の学力では彼の志望校に行くのは正直難しい。しかも全寮制で会うのも難しくなる。けど、だからこそ、離れたくなくて力強く頷いた。
「俺、頑張ります!部活も、勉強も、弥耶さんに追いつけるように!」
「うん、待ってる。約束な?」
安心したような、優しい笑顔。
そして、その日、初めて関係がひとつ進んだ。
卒業式の日、弥耶さんは同級生や後輩に囲まれて、とても近付く猶予はなく、俺は少し離れたところから見ていた。
そんな俺に気付いた彼が周りのみんなに挨拶を済ませて駆け寄ってくれる。
嬉しくて、寂しくなった。
「波輝、俺はもうこの学校の生徒じゃなくなるけど、高校で待ってるから」
そういって、学ランの第二ボタンをくれた。「ベタすぎて恥ずかしいかな」なんて照れ笑いを浮かべながら。正直、可愛いっス、先輩。
そして、高校生になった彼はその生活が忙しく、メールや電話でやりとりをしていたものの、距離はどうしても開いてしまった。
いつの間にやら時間は過ぎて、いよいよ俺の受験結果は…
桜散る
涙も散った
恋の行方は…
やはり地頭の違いというのはどうしようもなかった。
約束を果たせなかった俺は情けなさから先輩に報告をしたまま、それっきり連絡ができなかった。
何度か彼からのメールや留守電はあったものの、それに返事すらしなかった。
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