青春サイダー

・作

交際というには幼い関係だった高校生の三ツ矢と一つ年下の斉田。三ツ矢の卒業とともに別れを切り出され、愕然とする斉田は何も見出せずに流れるままに進学し、就職した。そこでとある仕事で再会する二人。果たして三ツ矢の本心は。

「俺たち、終わりにしよう」

突然の言葉に頭が真っ白になった。

「え…何、言ってんですか…?」

混乱する頭でひねり出せた言葉はこれだけだった。

「だから、終わりにしよう。別れよう」

桜の花が芽吹く頃、少年、斉田直人の恋は終わった。

一つ上の先輩である、三ツ矢祐樹の卒業式後、一方的な切り出しで。

*****

「三ツ矢さーん!」

背後から聞こえる元気のいい声に呼ばれた彼は振り返る。

「よう、直人。お前も今帰り?」

「はい、一緒に帰りましょう」

まるで飼い主に懐く子犬のようについてくる直人が三ツ矢には可愛くて仕方がなかった。想わず少し目線が下のその頭をわしゃわしゃと撫でると嬉しそうに笑う顔が、大好きだった。

「どっか寄ってくか?」

「そうっすね…お腹空いたんで、ハンバーガー食べに行きません?」

「お、行く行く。クーポンあるぜ」

言いながら、駅前のハンバーガーショップで、食べながら他愛のない話をする。

お互い、そんな何でもない日常が当たり前に続くと思っていた。

それが、まさかある日突然、音もなく崩れ落ちるなどと、誰が想像しただろうか。

*****

その後、抜け殻のように直人は高校生活最後の一年を過ごし、打ち込むものもなかったため、勉強だけがただただ暇つぶしになった。結果、大学はやたらいいところへ行くことができたが、そんなことはどうでもよかった。

大学生活の中、適当に彼女を作ってはすぐに別れてを繰り返し、学内でもいい噂のない、女の敵のような扱いになってしまった。

気付けば就職活動が始まり、なんとなく広告代理店に就職が決まった。どうしてもやりたい仕事ではなかったが、ホームページのデザインやどのように商品を売り込むか考えるのは好きだった。

就職して三年が過ぎ、それなりの仕事もするようになったある日、海外との契約を結ぶ話が浮上した。そのチームに自分が抜粋されるとは思っていなかった直人は、大きな仕事に緊張しながら顔合わせのため会議室で先方を待ち、扉がノックされると同時に椅子から立ち上がり、ドアが開いて数人のスーツ姿の人間が入って来た中に一人の日本人がいたことに気を取られ、次の瞬間、目を疑った。

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