贅沢な愛に溺れる (Page 3)
肉の焼けるいい匂いにつられて目を覚ますと、シーツは新しいものに取り換えられていてきちんと服も着せられていた。
上半身を起こしてぼんやりと室内を見回せば、俺の隣で静かな寝息を立てる翠の姿がある。
小中からずっとつるんでいる京はすごく面倒見のいいやつで、俺が宿題を忘れると授業が始まる前に付き合ってくれたり、何かあるとすぐに調べてくれたりもする。
俺が免許取ろうかなーなんて言った時はいつでも運転するからって先に合宿で免許を取ったから驚いたもんだ。
保険料だとか税金だとか、それから万が一事故った時のことも詳しく話されてビビった俺は結局免許を取らずにいる。
初めてのバイト先で店長にしこたま怒られたとき、バイト先に乗りこんで店長相手に説教していたのもすごかった。
京はそんな感じでかなり過保護だ。俺はそれに甘えちゃってるからいい加減自立したいんだけど、京だけでもダメ人間製造機なのに高校に入ってから2つ年上の翠が追加された。
「仕事なんか辞めれば?」
ベッドから抜け出そうとした俺の腰に回される腕。
眠たそうな翠が甘えるように低音で問いかけてくる。それは何回も2人に言われていた。
俺が働かなくても翠と京の収入で十分にやっていけるし、もしもの時に俺が困らないよう稼ぎ方も教えてくれた。
もういいってくらい気持ちいい思いをしてぐっすり寝て、起きたら大好物の生姜焼きが俺を待っている。
「俺も大人だしさ、自分の食い扶持くらい自分で稼ぎたいし…仕事まで辞めたら2人に甘やかされすぎてこのままダメになりそうなんだよ」
「なっちまえばいいじゃん。国俊の分まで稼いできてやるよ?」
テーブルに並んだ生姜焼きとサラダ、それに白い炊き立てご飯。味噌汁は見なくてもわかる、きっと俺が好きなわかめの味噌汁だ。
一通り並べ終えた京に呼ばれた俺と翠はベッドから降りて椅子に移動し、出来立ての美味しいご飯を頬張る。
翠は先輩だけど俺と同じ甘やかされ属性で、普段はいつも眠たげにしている。ぽやーっとしながら箸を持つ翠の口元に生姜焼きを運んで、食べる姿を眺める。
年上なのに可愛くて、京みたいな男らしさとは違う大人の色気もある。
京は一口が大きくて、がつがつ食べてさっさと皿を片付けた後は俺たちが食べているところを見守っていた。
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