一度だけでいいから、振り向いて。
俺はイケてるグループに所属し、毎日のように仲間たちと狩場に赴くが、実はゲイでネコ。気になった相手は同じナンパ仲間の女好き、ノンケのいかにもチャラ男。“自分からアプローチはしない。ただ眺めているだけでいい”と思っていた毎日。しかし思い人の吉住から男同士の方法についてのお誘いがあって…。
俺らは講義が終わると、決まってアイスクリーム屋に行った。
アイスクリーム屋のベンチでたむろってどの女の子をナンパするか吟味する。
アイスクリーム屋は商業施設の地下にあった。駅直結の商業施設のせいもあり、人通りが多い。
テナントは若い年代のターゲット層に絞られたアパレルブランドばかり入っていたため、最高の狩場だった。
仲間たちが女の子を見定めているなかで、俺は吉住の横顔だけを見てしまう。
だめだとわかっているのに。
吉住とは一度だけ体に触れあったことがある。
ほんのお遊びだ。
お互いの亀頭部分を合わせてこすりあうだけの。
なぜそんな雰囲気になったのか、今でもわからない。
あの日もアイスクリーム屋の帰りだった。
その日は人通りが少ないから、吉住にとって収穫がなくて気まぐれだったのか、お持ち帰りされたのは俺だった。
*****
「なぁ、俺んち来ねぇ?」
「え」
最初は戸惑った。
どうして俺を誘ったのか。
「あ〜俺も行きたい」という他の連中を巻いてまで、俺と二人になろうとする吉住の言葉が理解できなくて、会話は覚えていない。
俺はそれこそ吉住をずっとみていたが、吉住と話したことはほとんどなかった。
“仲間とつるむ”といってもそんなもんだ。1対1で話す機会はほとんどない。のに。
「こないだヤッた子がさ、男同士でも気持ちイイっていうじゃん」
吉住の家に着くとすぐにわかった。
「気になってたんだよね」
興味本位だ。
「アナルは女の子ともできるけど、ブツに関しては男同士でしかできないじゃん?」
吉住がジャケットを脱ぎながら一人で話をする。
俺にとっては夢にも思わなかった光景だった。
「なんか、お前口、硬そうだし」
興味本位でもよかった。ずっと見ていた吉住の家に入って、ずっと見ていた吉住からお誘いされて。
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