前提条件は愛の化学反応
一般企業のサラリーマンの河野洸人と、薬品会社の化学者社員の青木真也は、頻回に互いの家に泊まって過ごす仲良しカップルである。明日は待ちに待った2人揃っての休日。夕飯と酒の入ったスーパーの袋を片手に、うきうき気分で真也の家に行ったのに、まさかアレを飲んでしまうなんて⋯!
「洸人、流石に呑み過ぎじゃない?」
「これくらい大丈夫だっての。真也ももっと呑んだら?」
「あ、意地悪だ。僕がお酒そこまで呑めないの知ってる癖に」
「酔い潰れたら俺が優しく介抱してやるよ」
待ちに待った週末、俺も真也も明日は休み。この日を心の底から楽しみにしていた俺はお気に入りの酒をぐいぐいと煽り、隣には大好きな恋人がいてくれる事でこれ以上無いほど上機嫌になっていた。
真也の言うとおり、いつもに比べると呑むペースは早いだろうが、そんなことは今は気にならない。何よりとてつもなく気分がいい。
そしてそれを分かっているんだろう。真也は穏やかな顔で笑いながら、俺の世話を焼いてくれる。優しくて、穏やかな真也に、俺は心底惚れている。
「ん…、これもなくなっちゃったな」
「まだ呑むの?一旦水にしたら?僕持ってくるよ」
「大丈夫だって。お前も疲れてるだろ?水取りに行くくらい自分でできるっての」
立ち上がろうとする真也を制して、俺は飲み物が立ち並ぶ机の方へと向かう。
机の上には酒の入った缶がまだ数本。そしてそれらから少し離れたところにペットボトルに入った透明な水が置いてある。
それを飲みながら元いた場所へと戻ろうとすると、1口2口と口にしたそれに予想していなかった甘さを感じた。
「ん?なあ、これって水じゃなくてジュースだった?何か甘いけど…」
「え?っ、ああ!?」
「あ、悪い…。飲んじゃ駄目なやつだったか?」
俺が手に持つそれを見た瞬間目を大きく見開いて声を上げた真也に、謝りながらペットボトルの蓋を閉める。
「ひ、洸人、今それ飲んだ!?」
「少しだけだけど、飲ん…、ん…っ?」
慌てた様子で真也が俺の方へと寄ってくる。余程大事な飲み物だったんだろうか。そう思いながらもう一度謝ろうとしたところで、違和感を感じた。
身体が、酒を呑んでいた今までよりも更に火照っている気がする。
「洸人?」
「っ、なんか身体、熱くて…」
それに…。
「真也…。今、めっちゃ真也に抱かれたい。寝る前のつもりでいたけど、今真也とシたい…」
自分でも分かる。
俺の男根が膨れ上がっているのも、いつも真也を受け入れている場所が既にひくついているのも。
「洸人…」
「っあ!ちょ、えっ!?」
小さく名前を呼ばれたと思えば、急に真也に抱き抱えられた。
「っ、んんっ…!!」
ぐっ、と俺の身体を支える真也の手が触れる場所に電気が流れたかのように刺激が走る。
やっぱり、何かがおかしい。そう思っても今は身体中に滾る熱をどうにかしたくて、俺は真也の服をきゅうと掴んだまま運ばれるので精一杯だった。
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