Hから始まる似た者同士の恋 (Page 3)
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「アキ、風邪ひくぞ」
目を開けると、息を切らしたカケルが俺を見下ろしていた。
「カケル…?」
時計に目をやると、時刻はまだ真夜中だった。
「お前、なんで…」
「電話しても出ないから、心配になってタクシー拾ったんだよ」
携帯電話を確認すると、画面いっぱいにカケルの名前があった。
「…もう、寝てるとか思わなかったのかよ」
「まぁ、普段ならそう思うわな」
俺がソファに座り直すと、タケルは隣に腰掛けた。
「あんなことの後だしさ…」
その言葉に、俺はまた膝を抱えた。
話し合おうと自分から口火を切ったのに、いざとなると胸が苦しい。
きっと、同居と解消を言い出されるのだろう。
このままカケルを失ってしまう気がした。
「今朝、ちゃんと話そうって言ってただろ?やっぱ戻るべきだと思ってさ…」
カケルは俺の様子を横目で見ながら言った。
「…一緒に暮らしてんだし、別に明日でもいいじゃん」
ヤケ酒をしていたくせに…と心の中で自嘲する。
電話口の女の声を思い出して、俺は少し顔をしかめた。
「女と一緒じゃなかったのかよ…?」
「は?そんなわけないだろ。お前何言ってんだ?」
真っ直ぐな瞳で否定され、俺は少したじろいだ。
「アキ、もしかして俺が女と外泊すると思ったのか?」
カケルに心中を見抜かれて、俺は慌てて立ち上がった。
「ばっ…ばーか、自意識過剰なんだよ」
テーブルから空になった缶ビールを掴むと、逃げるようにキッチンへ行った。
背後でカケルがソファから立ち上がる気配がした。
「なぁ、カケル…」
俺は空き缶を潰しながら、振り向かずに言った。
「ここ家賃も高いしさ、同居は続けようぜ」
「どういう意味だよ」
缶の潰れる音の合間に、カケルが近づく足音が聞こえる。
俺はなるべく明るい声で続けた。
「安心しろよ。別に1回シタたくらいで、恋人ヅラなんてしねぇからさ」
自分で放った言葉に、虚しさが一気に込み上げた。
「…してくんねぇの?」
声を同時に、カケルが後ろから俺を抱きしめた。
「…カケル?」
背中が焼けるように熱い。
首筋をカケルの吐息がゆっくり撫でた。
「恋人ヅラ、してくんねぇの?」
「は…?」
驚いて俺が振り返ると、カケルが顔を真っ赤にしていた。
「アキ…順番は間違えたけど、俺と付き合ってほしい」
「カケル、それ本気で言ってんの…?」
カケルは耳まで赤くした顔を、大きく縦に振った。
予想もしていなかった告白に頭が真っ白になった。
「も…もし、手ぇ出した責任とか考えてんなら、やめてくれよ」
「そんなんじゃねーよ」
「俺、同情されて付き合うのは嫌な…」
「アキ!」
カケルは言葉を遮ると、俺の両肩を掴んだ。
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