二人の夜
幼馴染みの二人の初めての夜のお話です。中学からの幼馴染みの二人、少し大人しめのノンケ攻めと女の子も大好きな受けがひょんなことから二人でお泊りすることに。ちょっと強気で襲い受け気味の受けが好きな方にはおすすめです。
「なぁ、俺の話聞いてる?」
「ああ、聞いてるよ」
地元の駅を降りてすぐの焼肉屋。俺と奨太は今日も一緒に過ごしている。
中学からの幼馴染。喧嘩したこともあったけど、結局なんだかんだで一緒にいる腐れ縁ってやつ。
奨太が手元のタバコを灰皿に押し付ける。あんなにガリガリでひょろかった奨太が、今ではハイボール片手にタバコをふかすようになったと思うと、なんだか感慨深い。
もう、何年もこの横顔を見ている。
高校からの帰り道、些細なことでケンカした。そのくせに同じ電車の同じ車両に乗り込んで、端と端の席に座った。結局同じ駅で降りて、何事もなかったかのように二人で歩いて帰ったっけ。
そんな出来事ばかりが思い出に残っている。どれを思い出しても、いつも奨太は奨太で、見た目や嗜好が変わったところで、中身は何にも変わっちゃいない。
「でさ、今日のインターンまじで当たりよ、かわいい子多くて」
「何しに行ってんだよ、女漁り?」
「いやいや、ちゃんとやってるって!根は真面目なの、陽太が一番よく知ってるでしょ」
へらっと笑う、その口元。これも、昔から変わっていないところだ。
遊んでいる風に見えて、実はいつもしっかりやっているところも、頑固だけど、意外と涙もろいところも、ピンチのときは、意外と頼りになるところも。俺は、全部知っているつもり。
「なー、今日俺んち誰もいねーし、家で飲みなおそうよ。ここで飲んでても、金ばっかかかるし」
「ああ、いいけど」
学生お得意の宅飲み。確か奨太以外の家族は今日から海外旅行だと言っていたっけ。
会計札を手にした奨太が、勢いよく立ち上がって、じゃあ帰ろ!と言う。まぁ、帰るのはお前だけだけど、と返すと、さっきと同じ口元で笑う。
今日も、奨太の長話に付き合わされることになりそうだ。
奨太の家に着くと、本当に誰もいなかった。
「本当に誰もいないのかよ」
「なんでお前に嘘つくんだよ」
「いや、まぁそうなんだけどさ」
焼き肉の匂いが染みついたTシャツの裾を嗅ぎながら、奨太が「臭い!」と叫ぶ。
当たり前だろう、タバコも吸ってたくせにと言うと、むっとした表情が返ってきた。
「風呂入ろ、風呂。ちゃちゃっと」
「いや、俺はいいよ」
「嫌だよ、陽太だって焼き肉の匂いがぷんぷんするもん。ほら早く」
手をぐいっと引っ張られて、脱衣所へと連れていかれる。いや、ちょっと待て。この酔っ払い。
「待て待て、なんで一緒に入るんだよ」
「いいじゃん、銭湯何回も行ってんだろ」
「いやそういうことじゃなくて…」
突然の展開に頭が回らない。なぜこんなことになっている。なぜこんなに乗り気なんだ、こいつ。
奨太は先に衣服をぽいぽいと洗濯機の中へ放り込んで、早く来いとだけ残して浴室のドアを開ける。
俺はうなだれながらも、仕方なしに衣服を脱いで、浴室へと入っていったのだった。
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