君を消せない。

・作

バンドのボーカルだったカイが歌えなくなった。歌う彼の声が好きだった俺は、ショックをひた隠し、生活をした。しかし、カイの退院後、彼と同棲している家へ一緒に戻り、カイを癒すつもりで行為を始める俺だったが…―――。

カイが喉を潰した。

『彼が歌を歌えるのは、何年後になるかわからない』と医師は言う。

カイが病室で手に持っていたのは、黒いペンだけだった。
カーテンから風を乗せて、窓際で白いユリが揺れていた。

彼の指は、すっかり痩せこけてしまった。
その指で細いペンすらも握れるのか、マネージャーやローディーたちが慌ててしまうほど、見るからに彼は生命力を失っていた。

筆談でカイが俺たちと交わした会話は残酷だった。

『歌を辞める』

俺たちの音楽は、終わった。

カイの宣言の後、数10年連れ添った俺たちは簡単にバラバラになった。
スタジオミュージシャン、サポートメンバー、他アーティストの作曲や楽曲提供。
ありがたいことに培ってきたコネクションを使い、楽器を演奏する俺たちへ仕事は続々とまわってきた。

カイが入院している間も上昇していく仕事方面とは裏腹に、俺の心中は複雑だった。

カイが入院してからも俺は、カイのいない家へ一人で帰る。

忙しさで気付かなかった。
ガラステーブルの上でキラリと光る、彼がペンを握るよりも毎日持っていた58マイク。
今となってはサビの香りがするほど、手入れされずに放置されてしまったソレ。

俺の記憶の中で、何度も歌うカイがよみがえる。
悔しくて、嗚咽(おえつ)をあげて泣くしか俺にはできない。

*****

退院後、カイは俺と同棲していた家へ戻った。

「疲れたね」

俺がカイに話しかけると、カイは頷いた。
荷物の片付けも早々に、カイはベットに座って俺に手を伸ばす。

体はいいのか?と聞くと、彼はこくりと頷いた。

声の出ないカイ。
身体を触れ合わせるのは、久し振りだった。

カイのやせ細った体にやさしく触れていく。
入院生活で、すっかり白くなった。
腹にキスをする。骨ばった腰を指でなぞると、ぴくりとカイの体が跳ねた。

胸の突起を指で転がし、下でなぞる様に胸を舐める。
突起を口で含み、舌で吸い上げては、ちろちろと舐めるとカイが足をよじらせる。

「…キモチイイ?」

指を噛んで悔しい表情を見せる彼が可愛くて、いつもついついしつこく攻めてしまう。
が、今日は病み上がり。

カイ自身に触れると硬くなっている。
スウットを脱がし、カイへ指を伸ばすとすでに溢れんばかりに濡れていた。

「…っ」

先端を人差し指でぐりぐりと擦ってやる。カイの男根はますます硬さを増した。
手のひらで包んで、強めに握り、上から下へとシゴく。

カイの指が俺の髪に絡まる。
見上げると、彼の顔が上気している。

桜色に染まる頬。

俺の下半身も硬くなっている。

カイの足の間に入り、彼の薄い唇にキスをする。
舌をからめて歯の裏を優しくなぞる。俺の好きな、かけた彼の歯を舌先に感じた。

「ん…っふ」

鼻から抜けるカイの声。彼の声を聞くのは、とても久し振りだった。

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