そばにいさせて (Page 3)
「…っ…は…ぁ…」
「春希さんも…イったんですか?」
「…だって…ぇ…」
力なくその場に倒れ込む体。
今度はそれを自分のほうに向かせて、乱暴に唇を奪った。
春希さんの目元はすっかり赤く染まっている。
頬に残っている涙の跡を指でなぞりながら、俺はぽつりとつぶやいた。
「…ずっと、そばにいてくれないんですか」
「慎二…?」
思わずそんな言葉が、口をついて出た。
もうそばにいてくれないのではないか、そんな思いだけが独り歩きしている。
「俺…春希さんが、どっか行っちゃう気がして…不安で…」
指の跡がつくほど、強く握ってしまった手首。
それを撫でながら、後悔の念だけが押し寄せてくる。
「…こんなこと、したいんじゃないのに」
「わかってるよ…わかってる」
もっと優しい言葉で、もっとかっこいい言葉で、春希さんを繋ぎとめられたら。
そう思うのに、いつも自分の口から出てしまうのは、不器用で乱暴な言葉ばかり。
「…ちゃんと、わかってるから。慎二の気持ち」
「春希さん…」
「俺だって、誰かと、じゃなくて。慎二と、一緒にいたいんだよ」
こんな俺を受け止めてくれるのは、きっとこの人しかいない。
そう思うと、涙がこぼれそうになった。
春希さんが俺の背中に腕を回す。
どちらからともなく口づけて、何度もついばむようなキスをした。
唇が離れたら、二人顔を見合わせて笑う。
その表情を見るだけで、俺の胸は甘い痛みでいっぱいになっていく。
「ずっと一緒にいよう、慎二」
頬を撫でられて、俺は大きく頷いた。
同性だから、そんなこと考えなくていい。
こんなにも愛しい人がいる、それだけで十分じゃないか。
「…愛してます、春希さん」
「俺も」
腫れたまぶたに、そっと口づける。
今度は春希さんのほうから舌を絡められて、今度は俺が誘われる番。
「今度は、優しくしてね?」
「…努力します」
いつだって、あなたは俺の一歩先。
やっぱり、春希さんには敵わない。
そんなことを思いながら、首筋の赤いシルシにそっと口づけた。
Fin.
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