今夜、波の煌めく海岸で。 (Page 3)

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漁港のはるか向かい岸には工場地帯があり、煌々(こうこう)と赤い電気が灯り、かすみがかって優しい明かりになっていた。それが海面に鏡写しになり幻想的なステンドグラスのような淡い光が海に伸びている。波の上では上弦の月でところどころきらめいていて、ロマンチックだ。
俺達2人だけの秘密の場所。恋人としてこの景色を眺められたらどれだけ幸せだろうか。
もし、吉野も同じように思っていてくれたなら──

「先輩」
相変わらず何の反応もない仕掛けを揺らしながら、吉野は唐突に口を開いた。
「…どうして、最近毎週こんな綺麗なところに俺を連れてきてくれるんですか?」
いつになく伏し目がちに話す彼は少し恥じらっている様子だった。

「それは…」
言葉に詰まる。毎週欠かさずここに連れて来るようになったのは吉野を意識しだしてからだからあからさまなのは自覚があった。

「ごめんな、流石に付き合わせすぎたか?」
慌てて吉野の方を見ると膝抱えてうずくまっていた。律儀な奴だから言えずにいたのだろう。
「…正直」
吉野の答えは衝撃だった。
わかってはいたはずだが、頭を何かで殴られた様なショックが襲ってきた。深いため息をつき、落胆してしまった。
そんな俺を無視して彼は続けた。

「いや正直俺すごく嬉しくて、なんか妙な期待しちゃって、自分が変になったみたいで戸惑ってるんです…。男同士なのに」
俺はあまりに予想外の言葉に思わず息を飲み固まってしまった。

吉野の隠してる顔は見えないが、腕の隙間から覗く耳が真っ赤になっていた。
「吉野…それって」
まさか本当にこんなことがあるんだろうか。
「俺、変ってわかってるのに…ここで2人で過ごしてるうちに先輩のこと好きになっちゃったんです」
そう言いながら彼は震えた。怖いのだ。自分には気持ちがよくわかる。

だが、内心堪らなくて、言葉を紡ぐのに必死でそれどころではなかった。
「気持ち悪くなんかない、俺の方が先にお前を好きだった、嫌われるのが怖くてずっと言えなかったんだ…ごめん」
吉野は真っ赤にした顔をこちらに向けた。
口を開けてきょとんとしている。
緊張と驚きからか、瞳が潤んでより一層魅力的だった。

2人の間のクーラーボックスをどかし彼の頬に触れた。もう片方の手で釣竿を取り上げて、地面に置いた。
小麦色の華奢な手を握る。
「回りくどくてごめん、好きだよ」
「先輩…」
自然に顔を寄せてしまう。顔に両手を添えてやると吉野は、さらに頬を赤く染めた。

見たことのない可愛い彼をこんなに近くで眺められるなんて。もう、速まる鼓動が収まらない。
「好きだ吉野、キスしてもいいか…」
吉野は黙って頷いた。
そして俺達は静かに唇を重ねた。
優しくゆっくりと何度も、何度も。
「ん…」

彼は静かに吐息をもらした。
春の夜風が火照った頬を冷まし心地よかった。

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