障子の奥で (Page 5)
「…んぁ…っ、あっ、…るい、ッ…るいと…っ」
畳の目に白い指に乗った薄い貝のような爪が引っかかる。
耐えるように爪を立てる指を絡めとり、甘い声を漏らす喉仏に吸い付き舌でなぞりながら腰を揺らすとより一層高い声で鳴いた。
「…はぁ…っ、辛かったら、言えよ…」
馴染ませるように繋がったまま奥を少し擦ると切なげに眉を寄せる。
脚を肩にかけ半ばまでゆっくり引き抜いてから腰を打ち付けるとしがみつくように首に腕が回る。
「ああ…っ!…ん…、るいと…もっと、大丈夫だから…」
まるで強請るように深いところで絡みついた肉が甘くとどろく。
身体を折り畳んで体重をかけ、串刺しのように上から熱を叩きつける。
首を腕に回されたことにより、目の前には悦楽に耐えるように首をすくめて喘ぐやっさんの顔。
あの飄々(ひょうひょう)とした男がこんなにも色に染まるのか、そしてそれを乱しているのは自分だと思うと堪らない気持ちになり緩く開いた唇に噛み付いた。
*****
「ごめん、汚しちゃった…」
「あー…いーよ、平気。洗っとく」
日が傾き始めるまで夢中で貪りあって、気がついたときには二人分の着物は皺がより、畳のほつれた井草が無数に付いていた。
襦袢と肌着には体液が二人分の染み込み色を変えてしまっている。
喉が掠れてしまったやっさんを腕の中に収めた。
汚れてしまった着物がふと目に入り、申し訳なさが募る。
小さく謝ると胸に寄り掛かっていたやっさんは目を閉じたまま頬を寄せた。
「…言うの遅くなったけど、俺やっさんのこと好きだから」
「今言うんだ?さいてーだなぁ」
「…だって仕方ねーじゃん…」
触れ合った素肌が心地よい。
からかうように笑うやっさんを強く抱きしめると、くすぐったそうに身を捩り、腕を軽く叩かれ解放を求められてしまう。
ついさきほどまで熱に浮かされ求めあっていたのに急に不安に襲われる。
「でも、類人ドラマで濡れ場あるんだろ?」
来週からのクランクイン。脇役ではあるがストーリーの都合上濡れ場がある。
それを先々週だったかぽろりと話してしまった。
「俺が教えた着物を他の奴の前で脱ぐ奴とは付き合えません」
そう言ってするりと腕の中から抜け出されてしまう。
これは振られたのだろうか。
やっさんは素肌に藤色の着物を羽織り、汚れた衣類をまとめている。
その姿をがくぜんと眺めるしかできずにいると、それに気付いたのかふらりと寄ってきて額に小さくキスを落とした。
「オンエア、楽しみにしてんね」
Fin.
最近のコメント