壊れた二人 (Page 3)

　最初の二年間は、手錠や首輪をされていた。

　お風呂もトイレすら陸斗の目の前。

　そんなことがあって「陸斗を好き」になれるはずがない。

　いや、「好き」なんてバカバカしい感情を持てるはずがなかった。

　俺の体は陸斗に調教されている。

　もう陸斗じゃないと快感も得られないだろう。

　つーかケツじゃないともうイケない。

　外になんて何年も出ていないし。

　もし外に出る機会があっても俺は逃げないだろう。

　ドアが開けっぱなしであっても、逃げるチャンスがあっても、俺は陸斗から離れられない。

　陸斗は俺が好きだ。

　それだけは何も変わらない事実。

　こんな遅くまで仕事をして、ヘトヘトになっても陸斗は俺が逃げないかと不安になっている。

　帰ってきて俺がいることに安堵し、俺の作ったご飯を食べ、俺と一緒に寝る。

　ずっとそばにいて、ずっと見てきて思ったのだ。

　俺が突然にでもいなくなったら、陸斗は壊れてしまうと。

　そこまで俺を好きになる理由はわからない。

　そこまでして俺を繋ぎとめる理由は知らない。

　ただ酷く、俺という人間を愛している。

　それだけが現実で真実だ。

「ただいま、ユキくん」

　鍵の開く音と共に扉があき、陸斗は俺を見て安心して微笑む。

「おかえり、陸斗」

「わぁ、今日はビーフシチューなんだね」

「ああ。早く着替えて来い」

　テーブルに飲み物を持ってきながらリビングを出て行った陸斗を見送る。

　スーツ姿が定着した陸斗は、もう立派な社会人。

　後輩なんかもできて、慕われる先輩だろう。

　気づけば囚われて六年。

　最初の二年間は四六時中繋がれていたために、手首や首には消えないあざが残る。

　体中には消えることがなく増やされる諸事の名残り。

　そして今夜もまた、食事を終えれば抱かれる。

「ッぁ…くそっ」

　思い出しただけで反応する体に嫌気がさす。

　昔はこんなんじゃなかったのに、今じゃもう…。

「ユキくん、どうかしたの？」

「ッ…」

　柔らかな声に振り向けば、陸斗が俺を見下ろして微笑む。

　天使のフリをした悪魔のような陸斗。

　陸斗が一歩一歩と近づいてくるたびに体の奥底がうずく。

　反射的に一歩後ろに下がったとき、ガタッとテーブルに体が当たって逃げ場を失った。

「ユキくん？　今、どうして逃げたの？」

「ちがっ…逃げたんじゃ…！」

　陸斗は俺の股間に触れ、クスリと笑う。

「じゃあこれを隠したかったのかな？」

「あっ…」

「興奮しちゃったんだね。…かあわいい」

　ゾッとするような低い声に、逃げることができない俺の体は陸斗に囚われた。

………

「うっ、んっ…あぁっ！」

　陸斗の膝の上、胸を執拗につままれたり舐めまわされる。

　俺の精液が陸斗のお腹にかかる。

　それでも陸斗は気にせずに、俺のアナルと胸の尖りを執拗に可愛がった。

　グチグチと慣れ親しんだローションの音が寝室に響く。

「あぁっ！　んぁ、も、もっと…し、てっ…！」

「うーん、どうしようかなぁ…」

　胸から離れようとした陸斗の頭を、離れないように包み込む。

「おねが、い…もっと、リク、お願いッ…！」

「もうしょうがないなぁ。ユキくんは乳首大好きだもんね」

「すきっ、好きだからああっ！」

　ジュゥっと乳首を吸われて、俺はまたイッた。

　先端を引っ張っられたり、舌でグリグリと潰されるとすごく気持ちいい。