監禁ホストクラブ
とあるホストクラブでホストとして働く響 (ひびき)。キラキラとした世界に憧れて飛び込んだが、現実はトイレ掃除の日々で指名もゼロ。月末のミーティングでオーナーに呼び出される始末。てっきり説教を食らうかと思っていた響だったが――。
「おい、1本も指名取れないなんて断トツでビリじゃねーか」
「うっ…!」
罵声を浴びせられ、きつく絞められた首輪を持ち上げられる。
「よし、よろしくな俺の可愛いワンちゃんよ」
*****
またうちのナンバーワンに高級なボトルが入ったことを告げるコールが店内に響き渡る。
もう何回目かもわからないほどだ。
そんな大盛り上がりの歓声やらが漏れ聞こえる控え室でただ僕は大人しくしているしかない。
僕はしがないホストだ。
このキラキラとしているように見える世界に憧れてホストになった。
学生時代はそこそこモテたし、顔は悪くないと思う。
だけどいつまで経っても指名が取れず、ここ最近は開店前のトイレ掃除の方が本業な気がしてきた。
「清掃会社に転職するかな…」
現状、僕より後に入ってきた学生バイト君に負けている。
スマホを取り出し、営業電話を掛けたが誰も捕まらない。
…もうすぐ営業時間が終わる。
*****
元気のよいお疲れ様でしたという挨拶が店内にこだまする。
閉店後のミーティングだ。
ちょうど今日は月末なのでこの店のオーナーも来ていた。
オーナーとは面接のとき以来会っていなかった。
「おい…お前、覚悟はできてるんだよな?」
たまたま隣に並んだ先輩ホストに耳打ちされる。
「え? なにがですか?」
「やっぱり…知らないんだな」
突然そのようなことを言われ、困惑する。
「まぁ、いい。頑張れよ」と言ったきり先輩ホストはなにも答えてはくれなくなった。
やがてオーナーは今月の順位を発表しだした。
「今月もナンバーワンは奏馬! おめでとう!」
大勢の拍手に包まれ、ナンバーワンの奏馬さんは「ありがとうございます」と、ものすごく分厚い給料袋を受け取った。
…あんなに分厚い給料袋なんて昔テレビでやっていたホストの特集でしか見たことがない。
「響! お前以外は帰ってよろしい。みんな来月も頑張れよ!」
ああ、断トツでビリだから説教でもされるのか。
オーナーの一言で僕以外のホスト達は給料袋を手にぞろぞろと店を後にした。
*****
「ちょっと1杯飲まないか?」
てっきり叱られると思っていたのにニコニコと飲みの誘いをされ、驚く。
別に断る理由もないので僕は誘いに乗った。
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