魔法族の強欲
とある国に魔法族という魔法が使える貴族達が居る。その魔法族は男社会で女性の魔法族は居ない。そのため男性同士で子孫を残してゆく。成人したばかりのケイリンは特に魔力が強い子だった。年々強い魔力を持つ者が減ってきたと感じたケイリンの産みの親、ギルバートにより魔力が強い子供を産め、と命令され――。
「いやっ…!やめて!」
「お前も俺も魔法族に産まれちまったんだからな」
「いやあああああ!」
無駄に広い屋敷に成人を迎えたばかりの青年の叫び声が響き渡った。
*****
「痛いっ! ああ! 助けてっ!」
「頭少し見えて来てるよー! もうちょい頑張って!」
「…やはりケイリンにお産はまだ早かったのでは…」
「今居る魔法族では1番世継ぎを産むのに相応しかったんだよ」
そんな周囲の会話が聞こえてくる。
僕は今、お産の真っ最中だ。
それも望んだ妊娠ではない。
僕が魔法族という上流階級に産まれてしまったからだ。
いわゆる魔法が使える人達のこと。
男社会で女性の魔法族は居ない。
そのため子供も男性同士で作れるのが魔法族の特徴でもある。
僕は元々魔法の力が強かった。
産まれたその日に枯れていた庭のバラが一瞬にしてきれいに咲き出したり、壊れていた椅子まで直したときたもんだ。
意思疎通も取れない産まれたての赤ん坊のボクにだ。
もちろんそんな記憶はないし、そんな魔法を使った覚えもない。
魔法族にはそれぞれ得意不得意はあるが、色んな魔法が使える。
空が飛べたり、数分だが時間を止められたりと色々だ。
だかひとつだけ使えない魔法がある。
それは生死にまつわる魔法は使えないということ。
死はそのまま受け入れなければいけないし、新しい命が欲しければこうやって普通の人と同じように作るしかないのだ。
*****
「ケイリン? ちょっといいか?」
「あ、ギルバートさん」
ギルバートさんは僕の…普通の人間社会でいう母にあたる人だ。
つまり僕を産んだ人だ。
「ちょっと話がある。いいか?」
真剣な顔をして言うものだからその話というのは悪い話だ、というのはすぐにわかった。
「なんでしょう」
「君はとても魔力が強い。それはわかるか?」
「…はい」
「俺はそこまで魔力は強くないのになぜケイリンほどの強い魔力を持つ子を産んだのか不思議なくらいだよ」
もっと嫌な予感がして冷や汗が出てくる。
「言ってる意味、わかるよな?」
「僕に子供を産めと?」
いつかこのような日が来るとは思っていた。
「ここ最近の若い魔法族は魔力が弱い子が多いんだ」
それは僕も感じていた。
悪口のようであまり言いたくはないが、一般人と変わりがないような魔法族が増えている。
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