女装癖のライバル~彼はネコとは言ってません~
中村翔(かける)は普段からムードメーカーで成績もいいことをモットーとしていたが、陰気な木下薫(かおる)にトップを奪われやきもきしていた。ある休日、街で女装をした薫を見つける。薫は翔に一度だけ体の相手をする代わりに口止めを要求した。薫がネコだと思って応じる翔だったが、押し倒されたのはまさかの翔だった。
「よぉ、薫」
俺は目の前のワンピースを着たやつ…薫に声をかけた。
薫は俺の顔を見てぎょっと目を見開いた。
「翔くん…。何で君がここに…?」
「俺のことは別にいいだろ。それより薫…お前いい趣味してるな、女装癖かよ」
「君って嫌味ったらしいね、だからモテないんだよ」
「何だと!」
薫は俺の嫌味に嫌味で返した後、この状況が気まずいのか、深いため息を吐いた。
「なぁ、薫。取引しようぜ」
「取引…?」
「口止め料ってやつだよ」
薫は眉間にしわを寄せた。
ふふん、我ながら大きく出たと思うけど…今日くらいはいいよな。
こいつにはいつも腹が立ってるんだ。
俺は学科で成績トップ、運動もできる、ムードメーカーっていう三冠を持つ、完ぺきな男として君臨していた。
それなのに、一年前に編入してきたこいつが、定期テストで俺の総合点を超えやがったらしい。
こいつのおかげで、俺から大切な一冠がなくなってしまったのだ。
そんなにっくき薫が女装癖とは笑える。
薫、お前の罪は重いぞ。
すると薫は顔を上げて口角を上げた。
「うん、いいよ」
「いいって何が?」
「一回だけなら相手してあげる、僕の部屋でいいよね?」
「相手?」
俺が首をかしげると、薫は俺の肩に手を置いてから耳に顔を寄せた。
「僕、エッチ上手いよ」
「なッ、誰がお前なんかと!!」
「でも僕のこと襲えるんだよ?口止め料にはもってこいだと思うけど」
薫はわざわざ俺の肩に置いていた手を胸に撫で下ろして俺を見上げた。
触れられたところからじんわりと体が熱くなってくる。
「ね?いい取引じゃない?」
「あぁ、成立だ」
*****
俺は薫の案内で、薫の居るアパートに着いた。
「お前、親は?」
「僕一人暮らしだからいないよ」
「ほぉ」
「ほら、入って入って!」
薫に背中を押されて部屋に入ると、そこには殺風景な2DKが広がっていた。
「荷物少ないな」
「一人だとそんなもんでしょ」
すると薫は奥の部屋の扉を勢いよく開けて、俺の手を引いた。
「ここ、寝室なんだァ…」
「…ふぅん」
薫は俺を寝室に招き入れると、自らベッドに寝転んだ。
「翔くん…来て」
薫はワンピースの裾をゆっくりたくし上げて微笑んだ。
俺は薫の目に引き込まれて、薫に覆いかぶさった。
「薫…」
「な~んてね」
その瞬間、俺の体はベッドに組み伏せられていた。
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