マウント恋愛
高校時代からの腐れ縁の宮野あやせと杉原百合人は卒業とともに同居を開始。ワンコ属性のあるあやせと、クール系だけど恋人が大好きな百合人のほんわりした日常。互いに互いを好きである彼らは今日も我が道を行きます。さて、今日はどちらがマウントを取るのでしょうか。
夏の暑さもここまで来るか、そう思いつつ、リモコンを手に取り、エアコンの温度を1度下げた。
隣で小さな寝息を立てて眠る華奢な背中が目に入り、そっと擦り寄る。
「なぁ、まだ出ないんだろ?」
もやもやと起きた気配が感じられ、ゆったりと問いかけた。
「俺は寝る」
「ははっ、だろうと思った。じゃ、今日はずっと家にいる?」
ずっと背中を俺に向けたまま、それからは何も答えなかった。
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冷えた空気の中で眠る、杉原百合人と、俺、宮野あやせは高校時代からの腐れ縁。
偏差値は低めの俗にいう不良高で、ケンカが日常、学校サボりは当たり前の毎日だった。
俺たちが一緒に暮らすようになったのは、高二の秋に、百合人が大学に行くと言い出したからだった。
頭の悪い俺とは違って百合人はやればできるやつで、学校サボっててもそこそこの大学なら合格できていた。
そんなのずるいじゃねぇかよって何も決まってなかった俺はぶっきらぼうに言った。
「だったら、おまえも一緒に来るか?」
「大学なんてガラじゃねぇよ」
「バイトでもしながら、料理の勉強でもすればいいだろ」
思いがけない百合人の提案に最初は、そんなこと簡単にできるわけないと決めつけていた。
だが、百合人の言うようにしてみれば幸運続き。
百合人と二人で探したアパートは家賃もそこそこ、だけど近くにコンビニはあるし、バイト枠は確保でき、俺が希望した料理学校は電車で2駅という近さ。
もちろん、百合人の大学は目の前という好条件の中にあった。
築何十年も経つ、少し古いアパートだけど家電はそろっていたし、部屋の広さも二人で住むにはベストだった。
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