この恋の価値観、合ってます?
二十歳の高松幸穂(ゆきほ)は、ゲイビデオの男優。同級生であるハイスペックな加藤潤に想いを寄せるも毎回、空振り。ただ、潤はもう少しで結婚を控え、海外へ行くという。幸穂は潤をものにできるのか…?誘って誘って、あわよくばホテルに連れ込もうと目論むハイテンション男子の恋物語。
世の中の価値観っていうのは、ほんっとに人それぞれ。
少し前だけど、何もしない人を募集した求人が話題になったり、他人から見ればゴミだろってものをケースに入れて陳列するマニアがいたりする。
物の考え方、趣味は他人に迷惑がかからなかったら、それはそれでいいと俺は思う。
ただ、俺の仕事っていうのは、とてもじゃないが万人受けはしないだろうな、と思う。
「んっんっ!あぁっ、すごいっ!」
「アッ……あッ!」
「おらっ、すごいことになってんじゃねぇかよっ!」
安っぽいベッドの上に全裸の男が二人と女が一人。
男の一人はベッドに仰向けになり、男の中にペニスを突っ込み、ペニスを尻に突っ込まれた男は女の中にペニスを突っ込んでいた。
「ちょっ……、三雲さんっ、マジでヤんないでくださいって……!」
仰向けの男に、尻を犯されていた男、すなわち、俺はこそっと耳打ちした。
たゆんたゆんと女の胸が揺れ、その振動で咥え込んだ三雲さんのペニスがどんどん俺の中をえぐってくる。
「撮影中だ」
三雲さんの返答は、それだけ。
「あぁんっ!」
「うっ……あ、あぁっ!」
俺より全然余裕がある女は、計算された喘ぎ声を漏らして、さっさとイった演技をしてみせた。
髪を振り乱してイった余韻に浸る、その女、鮎川(あゆかわ)ココアに掴まれていた俺の肩がブルブルと震えた。
俺のこれは演技なんかじゃなかった。
*****
控室に戻って沈黙。
今日もまた三雲さんと鮎川さんに、いいように持って行かれてしまった。
「あら、なに。まだ凹んでるの?高松くん、いつまでも子どもね~」
ベテラン女優、鮎川ココアは、すでにシャワーを浴び終えて化粧もバッチリ状態で、好みの飲み物を片手に俺をからかいにきた。
人妻系のビデオに出ていた頃より若々しくなったというのは、私生活で超がつくイケメン男性と結婚したからなのだとか。
互いにバツイチ同士らしいけど。
「いいですよね、鮎川さんは。きれいだし、教養あるし。あれでしょ、今度、コンドームのデザインとかにも関わるって」
「ビジネスはねぇ、手広く、ガッチリ!これに限るわ!」
確か、前の旦那さんとの間に子どもがいたんだよなー。
もう中学生くらいだっけ。
海外に拠点を置いてるプロのサッカークラブに入ってるんだよなー。
才能って怖いわ、マジで。
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