この恋の価値観、合ってます? (Page 2)
「それより、三雲さん、ちょっと様子がおかしかったじゃない」
「あー、そうっすね」
「若い男としかアブノーマル系のプレイはしたくないってスタッフから聞いたことあるけど……、高松くんって、まだ二十歳よね?このシリーズも三作目だし」
「俺との相性が悪かったんじゃないですか?」
「高松くんは、よかったのよね?」
「あー……まぁ……は、ははは」
笑って濁したけど、実際のところ、俺にとって三雲さんはヤバイレベルの人だ。
前回は二回目の共演で、すごく緊張して、台本通りにやらなきゃって、そう思った。
初共演のときのことは全く覚えてない。
鮎川さんの言うように、今回で共演は三回目。
売れ行きも、まぁまぁよくて、三雲さんも承諾してくれてるから、大丈夫だと思ってたけど……。
まぁ、あれか。
こういうプレイが好きな趣向のみなさん方は、ストーリーよりもプレイ重視だよな。
売れてるんだから問題はない、と思うんだけど、やっぱ三雲さんとしては納得いかないのかな~。
「おい、高松」
「は~い?って、あ、おお、お疲れさまです、三雲さん……!」
帰り支度をしていると、低くてうなる獣のような声がした。
振り向けば、三雲さんが仁王立ちしていた。
「ど、どうしま、した、か……?」
「さっきは悪かった」
「へ?」
「それだけだ」
はたから見れば仕事のできる超エリート!な三雲さんは、ふん、と鼻を鳴らし、去って行った。
そろそろ引退か、と囁かれている三雲さんだけど、受けた側の俺としては、まだまだ現役続行だろって感じだ。
特にグラインドが半端ない。
というか、尻は突っ込まれるわ、息子は締め付けられるわっていうサンドイッチ状態の俺、今日すごく頑張ったんじゃないか?!
うん。
頑張った。
超頑張った!
ネコ側の現役寿命はそう長くはないとはいえ、二十歳になって、元々の性癖をひた走らせて飛び込んだこの業界。
好きな仕事とはいっても、さすがに精神的にも肉体的にも称賛されてもいいと思う。
今日の撮影は特に。
特に!
三作目だし!
「っつーことで、今日は俺のおごり!いやー、飲もう!もうつぶれるくらいに飲もう!」
「……なんで、おまえの都合で俺は呼び出されなきゃいけねーんだよ」
「おごりだぞ?!俺の!わかってねぇな!潤!」
「個室だからってギャンギャン騒ぐな」
きれい目のシャツに黒髪短髪のイケメンメガネの幼馴染、加藤潤は焼けていく肉にしか興味がないらしい。
「幸穂(ゆきほ)、そこ、焦げてる。おまえが食え」
「おーおー、食うよ!食えばいいんだろ食えば!」
淡々と呟く潤。
こう見えて、来月末に結婚を控えている。
淡々としてそうだけど、無関心そうだけど、女はこういう男に惹かれるんだな。
昔から頭よかったもんな、潤は。
両親ともに海外でバリバリ働いて、高校生の頃にはセキュリティ万全のマンションに一人暮らしだし、高校卒業してからはベンチャー企業とか何とかってやつで若くして経営者になり、年収は何億って稼いでて。
でも、どんなに忙しくても俺の誘いには乗ってくれる。
自由の身なのは来月の頭までだろうからって話なのか。
「で、どうなの、結婚相手、外国人なんだろ?」
「おまえに教えてどうなるんだよ」
「俺の次の撮影、金髪外国人なんだよ。しかも巨乳でロリ顔。よかったらDVDプレゼントしようか?」
「いらんわ」
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