この恋の価値観、合ってます? (Page 4)
今日の撮影はバリバリのザ・男だらけの……暑苦しいやつだった。
ムキムキなマッチョがいっぱいで、俺はゲイだけど、いや、ゲイなんだけど、やったね!うふふ!あはは!とまではいかない空気でした。
ありがたいことに、この業界内でちょっとは有名になってきた俺に与えられた試練。
この前の三雲さんと鮎川さんとのサンドイッチ撮影よりはハードじゃなかったけど、疲れるもんは疲れる。
「ってなわけで、今日も焼肉じゃー!かんぱーい!」
「…………」
「おおい、おおい!ムスッとしてんじゃねーよ、せっかくの焼肉だろうがよ!しけた面して焼いてんじゃねぇよ!」
「俺はな、幸穂。もうすぐ引っ越すんだよ」
「だな!知ってる。さっきもそういう話だったな!」
「海外に拠点を移すにあたって、日本支社を作ってるのも話したよな」
「あっちこっちに、おまえの会社ができるんだよな!聞いた!」
「今日は結婚相手のご両親とディナーの予定だった」
「あ~!そりゃ大変だわ。俺なんかと焼肉してる場合じゃねーわな」
「どうしてもって泣きつくから、来てやってみれば……いつも通りだな」
「一緒に焼肉、食いたかったのは本当だ!潤!」
いい具合に焼けた肉を潤は俺の皿に乗せてくれた。
店特製のタレをつけて、ぱくり。
「……おまえ、俺がいなくなったら、どうすんの?」
「潤がいなくなったら?んー、まぁ、焼肉はしばらく、おひとり様かなー」
「撮影で一緒になったやつらとかと一緒には行かないのか」
「んー、どっちかっつーと、超肉体的労働者同士!って感じだしな。役者も掛け持ちしてる人とか多いし、編集作業もいろいろ大変っぽいし。俺としてはなー」
「そうか」
「っていうかさ、結婚相手のご両親とのディナーってマジですっぽかしてよかったのかよ」
「ちょうど向こうにも予定が入ったらしい」
「そっかそっか。予定がなくなった潤の相手をしてやってる俺、やさしいな」
「どっちがだよ」
潤との焼肉も、あと少しか、そう思うと、目の奥がちょっとじわっとした。
「なぁ、潤……。こうやって、おまえと一緒にいられんのも、あと少しなんだよな」
「まぁな」
「一回くらい、マジで俺のこと抱いてみ?」
「今日もケツ、使ってきたんだろ」
「最初で最後じゃんか。もう、これっきり。後腐れなしにするからさ」
「それは男を相手にしたこともなけりゃ、女も抱いたことがない俺に向かって真面目に言ってるやつか?」
「今まで何度も誘ってただろーがよ」
ジュワジュワといいにおいをさせている肉を俺の皿と自分の皿に取り分けた潤は、メガネをくいっとやると、真正面から俺を見て言った。
「一回だけだからな」
どこの馬の骨だか知らん女に潤の童貞卒業を祝われてはたまるかよって思ってた俺は心の中で会心のガッツポーズを決めた。
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