ブラックコーヒーにミルク (Page 5)
五
いつの間にか21時を回っていて、私たちは服を整えたあと店を出た。
涼しい風が吹いている。
「夏も終わりだな」
呟くと、彼は少し寂しそうな顔で、そうですね、と言った。
その寂しそうな表情が妙に引っかかり、私はそっと彼を抱き寄せた。
「明日も、明後日も来るよ」
「…はい」
「家まで送るよ」
言うと同時に彼は私を引き剥がし、一歩後ろに下がった。
「大丈夫です。すぐそこですから」
そしてそのまま私の目を見て、笑顔を見せる。
「また明日、お待ちしております」
私が返事をする前に、彼は小走りで駅の方へと向かっていった。
時折振り返り、大きく手を振る姿はまるで子どものようで、思わず顔がほころぶ。
そういえば連絡先を聞いていないな、とぼんやり思いながら、私は彼の小さくなる背中を見つめた。
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