ねえ、大好きだったよ
今日は大好きな彼の誕生日だから、遊園地でデートするんだ。だけど、なんだか君は心ここに在らずって感じ。1番楽しみにしていた愛のジンクスがある観覧車のいちばん高いところで彼から伝えられたのは…甘く切ない2人の行く末をどうか見届けてください。
ベランダでタバコをふかす横顔があまりにも綺麗だった。ねぇ、僕はずっと君と一緒にいれたらいいなって思ってたんだよ。
*****
『蓮〜、早く行くぞ』
「ちょっと待ってよ、あと2分!」
玄関で靴を履きながら僕を呼ぶ声。今日は久しぶりのお外デートだから、たくさん準備することがあって。髪のセット、お弁当作り、それから今日は君の誕生日だからとっておきのプレゼントもリュックに詰め込んだ。
『おいていくぞ〜?』
なんて声に慌てて玄関へ向かう。
「おまたせ〜蒼真(そうま)!それじゃ、しゅっぱーつ!」
助手席から見る君の横顔が愛おしくて、他愛もない会話をしながら時間が過ぎる。到着したのは最近話題になっていた遊園地。この遊園地の観覧車でキスすると、幸せになれるって聞いたから、君をここに誘ったんだ。
「わぁ〜!すごいね、蒼真。…あ、そうだ!カチューシャ買おう!カチューシャ!おそろいのやつ!」
『えー…恥ずかしいんだけど』
「いいじゃん、せっかくなんだからさぁ」
なかば無理やり腕を引いて遊園地の中にあるショップへ入っていく。うさぎの耳やくまの耳、ねこ耳からちょっと変わったゾウの耳までいろいろあったけど、結局2人でくま耳カチューシャを買うことにした。
「かわいい〜!写真撮っていい?」
『あー…いいぞ』
「えっ!いいの?」
『なんだよ、撮りたいんじゃなかったのかよ』
「いや、撮りたいけど!いつも嫌がるじゃん」
『じゃあ嫌だ』
「えええっ!やだ!撮る!はいチーズ!」
普段写真に写りたがらない彼がやけにすんなり撮ってくれたことに違和感を覚えていれば…
「蒼真!次はあれ乗ろ!メリーゴーランド!」
『まぁいいけど。どれに乗るんだ?』
「んー…馬車!」
『馬じゃないんだ』
「だって馬車なら隣に座れるじゃん!」
『…そうだな』
緩やかに回るメリーゴーランドの馬車の中で手を重ねる。なんとなくお互いに黙りこんで指先を絡めた。
あっという間に時間はすぎて、オレンジ色が空を覆う。わがままを言うのなんていつも通りなんだけど、何となく緊張しながら話しかけた。
「蒼真、あの…僕…」
『ん、乗るんだろ?あれ』
そう言いながら蒼真が指さしたのは大きな観覧車。まさか彼から誘ってくれるなんて思いもしなかったから嬉しくてつい、腕にぎゅっと抱きついた。
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