オフ会にはご注意を
就職活動に失敗し、自室に引きこもってネトゲばかりしている真央(まお)。真央がはまっているゲームはバトルが主流のものであり、よく「イツキ」という名前の人物とコンビを組んでクエストをしていた。ある日真央はイツキから「今度実際に会えないか」とオフ会の誘いを受けたのだが……!?
真央はかつてないほど緊張していた。今日はいつもネットゲームでコンビを組んでいる「イツキ」と初めて現実で会う、いわゆるオフ会だからである。就職活動で失敗し続け、大学を卒業した後も仕事が見つからず引きこもりになった真央にとって、久しぶりに出た外はまぶしくて仕方がなかった。イツキに幻滅されないようにと髪を切り、新しく買った服を着て真央はオフ会の集合場所へと向かった。
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集合場所のカフェの入り口付近へと着いたはいいものの、真央はすでに来たことを後悔し始めていた。まず人が多い。そして全員なんかキラキラしている。隠キャを自覚している真央にとって、この空間は眩しすぎた。場所はイツキが指定してきたところだったが、この時点でイツキもとんでもない陽キャなのではないかという想像が頭をよぎった。自分の格好はあらかじめイツキに伝えてあったが、グレーのパーカーにシャツ、ジーパンに加えて冴えないメガネというファッションは明らかにこの場から浮いていた。
「あのー、マオさんですか?」
「えっ」
びくびくしながら立っていた真央に、唐突に1人の男が話しかけてきた。
「オレ、イツキです!……あの、人違いだったらすみません」
「あ、いえ、俺、マオですあってます!」
「合ってた!よかったぁ」
そう言って笑う男、もといイツキはとても爽やかで清潔感があってキラキラしていてとんでもなく顔がよかった。イケメンだ。なんだこいつ。本当にゲーム廃人を名乗り自分とコンビを組んでいるイツキなのか?こんなリアルが充実してそうな奴がゲームにあんなにのめり込むのか?頭の中がぐるぐるとしている真央に対してイツキは「立ち話もなんだから」とカフェの中に入っていった。真央もあわててついていくと店内はとてもおしゃれで自分の場違い感にさらに帰りたくなった。
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第一印象に反して、イツキはとても話しやすい人間だった。それはそうだろう。毎晩のようにゲームでつるみ、会話し、同じクエストに出かけているのだ。話が合わないわけがなかった。真央はイツキとあっさりと打ち解け、カフェを出てもまだしゃべり足りないということで近くのバーに入り、軽食を食べつつイツキの勧めてくるままにカクテルを次々と飲んでいった。そして最後に出てきた綺麗な青色のカクテルを飲んだあと、真央の意識はふつりと途切れた。
「こんなに薬の効果って早く出るんだ」
そんなイツキの声が聞こえた気がした。
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