満員電車と仕掛けられた罠

・作

満員電車で通勤するサラリーマン、純平(じゅんぺい)。彼は悩みを抱えていた。それは最近毎朝痴漢にあうということ。痴漢の行為は段々とエスカレートしており、昨日はついにパンツの中に手が侵入してきた。純平は会社の後輩、涼(りょう)にだけはこのことを相談していた。話を聞いた涼は「一緒に通勤する」と言い出して……?

「……っ、」

とある企業に勤めるサラリーマン、純平は今朝も満員電車に揺られていた。そして今朝も、後ろから忍び寄る手にもてあそばれていた。

「ん、ゃ……」

声を漏らさないように必死な純平だったが、手はそんなこと知らないとばかりに純平の尻を揉みしだき、くるくると穴をスラックス越しに触ってくる。そして手は前に周り、純平のベルトを外しにかかった。止めようとするも、ここは満員電車。片手には荷物、もう片手で自分の体重をドアに預けて支えている状況ではその手を止めることはできなかった。

「ゃ、め……」

純平のすがるような声など聞こえていないのか、あるいは聞く気がないのか、手はベルトを完全に外して純平のスラックスの内側、さらにはパンツの内側に侵入し、性器に触れてきた。

「ゃ、やだ……!」

身体を捩って逃げようとする純平だったが、満員電車の中で逃げる場所などあるはずもなく、そのまま手に性器を擦(こす)られ、弾かれ、あっけなく達してしまった。パンツの中がベタベタと気持ち悪い。そこまでやられたところでやっと会社の最寄駅に着き、転がるように純平は電車を降りた。

「気持ち悪い……」

そのままコンビニでパンツを買い、トイレではきかえて純平は会社に向かうのだった。

*****

「え、先輩また痴漢にあったんすか!?」
「ちょっと涼、声が大きいよ……!」

喫煙室で純平は後輩である涼に今朝の出来事を打ち明けていた。涼は純平にとって初めての後輩であり、OJTを担当した相手でもある。直属の先輩である純平に涼はとてもなつき、また年も近いことからよく一緒に飲みに行ったり休日に遊びに行ったりする仲になっていた。だから痴漢にあうようになった時、純平は真っ先に涼に相談した。涼は真剣に相談に乗ってくれて、アドバイスをしてくれた。それでも痴漢にあい続けることに純平は悩んでいた。

「涼のアドバイス通り、車両も変えたし一本早い電車に乗るようにしたんだけどな……どうして痴漢も同じ電車に乗ってくるんだろう」
「そうっすよね……」

涼も真剣に悩んでくれている様子に純平は嬉しくなった。こんなに優しい後輩を持てて自分は幸せだと思う。

「……わかりました。オレ、先輩と一緒の電車で通勤します!そんで先輩のこと守ります!」
「え!?」

涼の発言に純平は驚きを隠せなかった。しかし、その言葉が嬉しかったのも真実で。

「黙って聞いてるだけなんてできないっすよ!」
「涼……ありがとう」

そして次の日から2人で通勤をすることになったのだった。

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