プライスレス・ラブ (Page 4)
*****
指定された待ち合わせ場所に、十分前に着いたが、何やら人だかり。
その中心にいたのは。
パープルウィッグを着けて、青色の大きな花を頭に飾った女装男子、ケイ。
若い男女に囲まれていた。
どうやって助け出すか。
参ったな、こんなことは初めてで、どうしたらいいか、わからない。
黙り込んで考え込んで数分、ふと、女装男子の視線が俺に飛んできた。
「ごめんなさい!マネージャー来たんで、行きますね!」
ケイ、もとい霧島は俺の隣に来ると、集まった子たちに手を振っていた。
マナーは守ってくれるのか、追いかけてくる子はいなかった。
「なんで俺がマネージャーなんだよ」
「だって、その方があの場は収まるでしょ?」
「今日はまた一段と、あれだな、目立つな、おまえ」
「そりゃ、真鍋さんと念願のデートだし!でも、よかった。真鍋さん、ちゃんと来てくれて」
「約束したからな」
「あはー!そういうところも好きです!」
霧島の格好は若者の街にはよく溶け込む。
女装してるとか、そんな領域じゃない。
時代のニーズに沿っているといえるだろう。
俺はといえば無難にモノトーンで何気なく決めた服装で、芸能系のマネージャーといえば、それらしかった。
「で?どこ行く予定なんだよ」
「真鍋さんが普段行かないところに行きましょうよ!」
霧島は、見るからに甘ったるい色使いの店を指さして、俺の腕を引いた。
テレビで見たことのある、いかにも女子が好きそうな店内。
店内には、甘ったる~い匂いが充満していた。
「あ。待ってください、真鍋さん。写真!写真撮るんで、手、邪魔です、手」
「あ、うん、ごめん」
霧島のスマホがパシャパシャ光る。
炎上しちゃうとアレなんで、とか何とか言って、俺が写真に写らないように気をつけながら、真剣な眼差しの霧島。
顔の角度を次々に変えて、写真タイム。
数分後、目の前に(霧島が勝手に頼んだ)パンケーキ。
俺のは、これでもシンプルな部類のものをチョイスしてくれたらしいが、おっさんにはきつい。
「半分でいいんだけど」
半分も食べられるのか、微妙だけど。
「あ。意外にイケる」
そう呟くと、店に入って来た、中年のおじさん二人組と目が合った。
よく見れば、斜め向かいでは、俺が食べているパンケーキより、女子ウケが高そうなものを食べているおじさんなんかもいた。
確かにこれは店内に、俺の他にもおじさんがいてもおかしくないなと思えた。
パンケーキをおいしい、と言いながら食べる霧島が少しだけ可愛く見えた。
*****
最近のコメント