プライスレス・ラブ (Page 9)
とてつもない感覚に声が出ない霧島。
目は虚ろで、唇の端からは唾液がこぼれていた。
強く握っていた霧島を開放してやると、こぷ、こぷ、と出せなかったモノが溢れてきた。
イッていることに気づかないまでに失神状態の霧島は、中を突き上げても、されるがまま。
「おら、霧島。休んでんじゃねぇよ」
ぺちぺち、霧島の頬を軽くたたく。
「霧島?おい……」
さすがに、やりすぎたか。
霧島の中から出ようとすると、霧島の指が俺の体に触れた。
「いま、の、……もっと……して」
「とんだ性癖だな」
まさか、メスイキのリクエストをもらうとは。
くくっ、と笑って承諾した。
「なぁ、メスイキは俺が初めてか?」
聞くと、霧島は小さく頷いた。
その瞬間、なぜか俺は安堵した。
夜はまだまだこれから。
たっぷり楽しもうな、と霧島にささやいた。
*****
ベッドルームは、ほとんど物がなく殺風景だったが、バスルームはこれでもかと、にぎやかだった。
あれから、霧島を二回ほどイカせて、俺は三回ほどイキ、すっきりした。
くったりした様子の霧島が、どうしても一緒に風呂に入りたいと騒ぐから、案内されたバスルームに来たが、そこはメルヘンだった。
「猫脚バスタブに、なんだ、このぴらぴらしたやつは……」
「知らないんですか?SNSで俺が流行らせたんです。ほんと、真鍋さんって知らない人ですね」
「別に風呂なんて、湯があればそれでいーだろうが」
「真鍋さん、俺のこと好きになってくれました?」
「……保留」
「体の相性、よかったじゃないですか」
「体と心は別なんだよ」
「ま、いいです。保留ってことは全然脈無しってことじゃないし」
バスタブに浮かべた黒いアヒルで遊ぶ霧島のシャンプーの匂いを無意識に嗅いでしまったのは、なんでだろう。
「あ。真鍋さん」
「あ?」
「安心してください。タチ専やってることは誰にも言いませんから」
最初から、そのつもりなんてないことはわかってたけど、あえて何も言わなかった。
*****
あれから数か月後。
「真鍋さん、今夜、指名も固定も入ってないですよね。俺とふつーのデートしませんか?」
「待て。どうして、おまえが俺の予定を知ってるんだよ」
「……真鍋さんもSNS、少しくらいやった方がいいですよ」
俺のスマホの待ち受けは今もまだ初期設定のままだ。
Fin.
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