タチネコ争奪じゃんけん勝負
付き合って初めてのお泊まり。涼真(りょうま)も奏(かなで)も相手を抱くつもりでイメージトレーニングをしてきたせいで、ポジション争いが勃発。ベッドの上で睨み合っていた二人はお互いに譲る気がなく、とうとうじゃんけんで決めることに……?
付き合ってから初めて、恋人の家に泊まることになった。
といえば当然、終始甘い雰囲気になるものだろう——と、涼真は思っていた。
それが今、二人はベッドの上でにらみ合っている。
なぜ、こんなことになってしまったのか……その理由ははっきりしていた。
「……ここは普通、年上の俺がリードするところだろ?」
「年上って、二ヶ月だけじゃん。俺の家なんだから、ここは俺に譲ってほしいんだけど?」
事前に相談したわけでもないのに、涼真も奏も自分が相手を抱くつもりで今日に臨んでいたのだった。
自分がリードする場面は幾度となくイメージトレーニングを積んできたけれど、その逆は想像できない。
二人ともそう主張して引く気がないので、涼真は大きくため息をついた。
「こうなったら仕方ない……」
涼真はまるで刀を抜くように、両手を左の腰のあたりに引きつけた。
涼真の意図に気がついて、奏も右手をぐっと握る。二人の視線がバチバチと絡みあった。
「「……最初はグー! じゃんけん——」」
「ほいっ!」
「ほっ……ッ!!」
決着はすぐについた。涼真は自分の手のひらを信じられないような顔で見つめながら、わなわなと震えている。
奏はそんな涼真の前で、指をチョキチョキと動かして誇らしげに笑った。
「俺の勝ち~」
「っ……次は交代だからな」
「そんな気起きないくらい、気持ちよくしてあげるよ…」
「何言ってんだ、童貞のくせに…っ……」
ふざけていた雰囲気から突然真面目なキスをされて、涼真は思わず身を強張らせる。
まさか自分が抱かれる側になるなんて、微塵(みじん)も考えていなかったことだった。
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