狂い乱れる箱庭 (Page 4)

 身体にかかる重みに瞼をあげると、見慣れた天井が目に入った。

 両隣には俺を抱きしめて眠る颯と皐月がいる。

 静かに起き上がると、腰がジクリと響いた。

「ッ…てぇ」

 それだけじゃない。

 胸もぷっくりと腫れ、肌には噛み痕やキスマークが多々あった。

 薬を塗らないと痛いくらいには腫れている。

 絆創膏も貼らないと服にすれてヤバイ。

 

 そんなことがわかるくらい、俺は散々こいつらに抱かれてきた。

 

 何年もここで過ごし、こいつら以外には会わない。

 一歩もこの家を出ていない。

 

 それでもわからないことがある。

 どうして二人で俺を囲っているのか。

 それだけはどんなに考えてもわからない。

 

 颯も皐月も、俺が好き。

 重くイビツな愛情を持っているくせに、仲良く俺を分ける。

「意味わかんねぇよ…」

 そう声にした時、颯が勢いよく起き上がった。

 起こしてしまった、と思い口を開く。

 

 でも颯が先に焦った顔で俺を見つめ、抱きしめた。

「マオ…ッ!」

「…なんだよ」

「いや、いなくなったと…思っただけ」

 不安なのか颯は俺を抱きしめて離さない。

 颯の体が小刻みに震え、その背中に腕を回してトントンと優しく叩いた。

「ここにいんだろ」

「…そう、だね」

「俺がいなくなる夢でも見たの?」

 皐月を起こさないように小声で問いかける。

 颯も冷静さを取り戻したようで、俺の頬にキスを落としながら笑った。

「なんだったか忘れた。──俺のそばからマオがいなくなるわけねぇだろ」

「ああ、そうだな」

「…マオ?」

「なに?」

 颯は俺の目を真っすぐに見つめて不安そうに口を開いた。

「…いなくなんねぇの?」

「なんねーよ」

 二人に捕まってから心も身体も侵略された。

 もう異性になんて興味がもてそうもない。

「颯はさ、皐月と一緒になって俺が欲しいの?」

「…本当は俺だけのものにしたい」

「じゃあなんで皐月と一緒に──痛ッ」

 前兆もなく、皐月に愛撫されて腫れあがった乳首を颯の指先が引っ張った。

 電流が走ったようにビリリッと感じ、痛みに一瞬だけ目を閉じた。

 

 颯は俺の頬に唇を寄せて、脇腹を指でなぞる。

 耳に息が吹きかかり、俺の身体はまた反応した。

「マオは皐月が好きなの?」

「俺は…ッ」

「図星かぁ。やっぱり親友くんには負け──ッ」

 俺は重い腰をあげて、颯の唇に自分の唇を押し当てた。

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