愛棒な関係でお騒がせしております！

たくさんのコスプレイヤーがそこかしこで思い思いの撮影を楽しんでいる。

「猛くん、宗一郎さん、写真いいですか？！」

声をかけて来たのは、今大人気のマンガのヒロインのコスプレをしたかわいい子だった。

かくいう、猛と宗一郎も同じアニメのキャラクターだ。主人公ではないこの2人は、とある界隈で圧倒的人気を誇るコンビなのだ。

「もちろんですよー！こんな感じでいいのかな？」

そういうと、猛は宗一郎の顔に唇を寄せる。

「キャーーーー！！もう死んでもいい…！」

この2人は腐女子の間で大人気のカップリングのキャラなのである。王道は「タケそう」だが、「そうタケ」も負けじ劣らず大人気。だからこそ、ヤトは今回この「猛」を選んだ。

ヤトはコスプレネームだ。かわいい女の子にキャーキャーと騒がれる快感は、ヤトにとって日常ではあり得ない。

ヤトが女の子に気を取られていると、膝裏を蹴飛ばされカックンと地面に膝をついた。そこを後ろから首を締め上げられる。

「お前、いい加減にしろよ」

「キャーーーー！宗一郎さまー！」

ヤトに蹴りを入れて来たのは、宗一郎のコスプレをする相棒のカイリだ。イケメンなカイリとは以前会場で出会ってからSNS繋がり、よく一緒にイベントに行くようになった。好きなマンガやアニメの趣味も合うし、年も近いことからあっという間にプライベートも遊ぶほど仲良くなった。周りからは相棒ならぬ、愛棒（あいぼう）関係と認識されている。

お互いSNSのフォロワーもそこそこいて、イベントや即売会ではそれなりに人気のコンビになったのだ。

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ある日、SNSのライブ動画をあげようと話が盛り上がり、カイリの家にお邪魔することになった。何回か遊びにきたことはあるが、男の一人暮らしというわりにいつも片付いていているから「世話を焼いてくれるガールフレンドの1人はいるのかもしれない」と、ヤトは思っていた。

童貞の自分とは違い、カイリの女の子に対応する姿はいつもスマートだ。

初めての動画配信で、準備に少々手こずりはしたものの、なんとか予告通り22時からスタートした。

「こんばんはー！ヤトです。初めまして！」

「こんばんは、カイリです。ヤト声でかいよ」

「お、わりぃ」

「今日は、事前のアンケートで一番人気だった制服スタイルです。見えないけど、ちゃんと下もはいてますよ」

「カイリ、微妙に古い…さては緊張してるな？」

「そりゃ、初めてだからな。でもみんなで楽しく過ごせるようにがんばるよー」

「見てる人も気軽にコメントちょうだいね」

順調な出だしに、コメント欄も埋め尽くされ視聴数も上がってきた。

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