長いおあずけ

・作

元教師とその教え子である聡太(27)と秋斗(20)は、秋斗が成人するまではセックスをしないという約束で付き合っていた。そして来たる20歳の誕生日の朝、「今夜、絶対抱く」と宣言した秋斗だったが、その夜秋斗は、誕生日を知った友人たちに連れ回されてしまう。果たして、2人は無事初エッチをすることができるのか?!

薄手のタオルケットでは少し肌寒さを感じる季節。わずかな温もりを求めるように、寝ぼけまなこで布を手繰り寄せた秋斗の鼻腔を、コーヒーの香りがくすぐっていった。しばらく部屋の天井を見つめながら耳を澄ましていると、キッチンのある方から水の流れる音やスリッパが床を擦る音が聞こえる。恋人が朝食の準備をしているのだなとぼんやり考えて、むくりと上体を起こした。

*****

「…はよ」
「お、起きたか。おはよう」
眠そうな目を擦りながら寝室のドアを開けた秋斗とは対照的に、恋人である聡太はYシャツをしっかり着込んで出勤の準備を終えていた。
「目玉焼きとベーコンでいいか?」
「…なんでも」
男の2人暮らしだ。前の晩から仕込んでおいたフレンチトーストだのチーズたっぷりホットサンドだの、凝った料理はでてこない。それでも自分好みの焼き加減で、しかももうしょう油がかかっている目玉焼きとカリッカリのベーコン、栄養も考えてサラダも盛りつけられているのを見て、秋斗は恋人からのささやかな愛を感じるのだった。

「誕生日おめでとう」

椅子をひいてテーブルに着こうとする秋斗に、聡太はコーヒーをすすりながらシンクに寄りかかって声をかけた。
心なしかその目は泳いでいる。

「覚えててくれたんだ?」
秋斗はにやりと笑ってカトラリーケースに手を伸ばす。
「逆に変に意識してたよ、最近ずっと」
あんな約束しちゃったもんな、とマグカップで口元を隠しながら聡太が小さく呟く。
聞き逃すはずのない秋斗がさらに笑みを深くした。
「…いけね、俺もう出るから。鍵頼むな」
「オッケーいってらっしゃい」
「お前今日2限からだっけ?二度寝せずに行けよな」
「わ〜ったよ、せんせ」

聡太がマグカップをシンクに置き、秋斗の向かいの椅子に掛けたジャケットを手に取る。横をすり抜けていこうとした聡太の腕を秋斗が掴んで引き寄せると、線の細い恋人は簡単にバランスを崩した。

「わっ!なに……ん」

ちゅ、と軽く触れるだけのキスをして、秋斗は聡太の耳元に口を近づけた。

「今夜絶対抱くから」
「……っ」

吐息がこそばゆいのか夜を想像したのか、聡太はびくりと肩を震わせて急いで体を立て直した。

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