アプリで知り合った男が変態だったんだが
ゲイが集まるアプリでカラオケに行きませんか?という書き込みをしていた男性と待ち合わせをしたところ、優也 (ゆうや)と名乗る男と出会った俺。小柄で童顔で”男の子”といったほうが似合うような優也の本性とは――。
「歌、上手すぎだろ…」
俺は今、これからカラオケ行きませんか?という書き込みをしていた初対面の男性と会い、カラオケ店に来ている。
書き込みというのはゲイの男性が集まるアプリでのことだ。
待ち合わせ場所に向かうと、目印と言っていた水色のジャケットを着た小柄な男性が立っていた。
「あのー、ネコさん?」
声を掛けると振り返り、「はい」と答えた。
アプリ内でネコと名乗る男の第一印象は、今時の大学生風の普通の男性…というか、男の子といった感じ。
「随分若いみたいだけど…」
「僕、童顔みたいで…これでも30歳ですよ」
「えっ、ハタチとかでもイケるんじゃね? しかも俺より年上じゃん」
「はは、映画館に行ったら学生証出してくださいって言われたことあります」
苦笑いでネコは答える。
「…こんなところでずっと立ち話もあれだし、さっそくカラオケ行きません?」
*****
カラオケに着くなりネコは流行りのバラード曲を入れ、歌い出す。
その歌声はプロ顔負けの激ウマで、正直こんな小柄で童顔な男性の歌声にはまったく聞こえない。
「は? なんでこんなに上手いの? びっくりなんてもんじゃないんだけど」
「昔…歌やってて…」
歌いあげた後、少し恥ずかしそうに飲み放題のメロンソーダーに口を付ける。
「音楽の世界は厳しいから…」
もう一口メロンソーダーに口を付けた後、
「だけど今でも歌うことは大好きです」
目を輝かせて言う。
ああ、だから誰かとカラオケに行きたいなんて書き込みをしたんだ、と思った。
あのアプリに登録している人の9割はセックス目的で、いきなりラブホテルの室内が待ち合わせ場所になっていたりもする。
歌うことではなく、セックスをすることが大好きな人達ばかりだ。
「あの、次どうぞ…」
リモコンを手渡されたが、あんな歌ウマの人の後に歌うなんて気恥ずかしいから「あ、ごめん、お腹空いたからなにか頼んでいい?」と、誤魔化した。
*****
数分後、店員がミートソースのパスタ2つとビールジョッキ2つを部屋に運んで来た。
俺がミートソースのパスタとビール、と注文したら、僕も同じのお願いします、とネコは言った。
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