恋人とナイショの海デート (Page 2)
「んあっ! ふっ、んぅ…やぁめ、んっぁ」
俺の身体は布団に押しつけられる。
シーツをぎゅっと握り、掴まれるお尻に腰が打ちつけられた。
「嘘つき! 嘘つき! ぁアッ!」
「何がです?」
「遊ばせてくれるって言ったのに! 最低! バカ!」
視線を窓辺に向ければ、真っ青な空から日差しが入る。
さっき見た海の景色を思い浮かべて、唇をぎゅっと結んだ。
俺にとって海水浴場は憧れの場所だった。
ここの別荘と同じで、海のそばや、海がある島はいくつか所有している。
でもにぎやかな海で遊ぶことは叶わなかった。
誰もいない海につかることはあっても、静かな海を歩くことはあっても、にぎやかな海を経験できない。
いつも俺は見ているだけ。
いつもいつも楽しい皆を見ているだけ。
俺が遊べるのは所有する場所か、貸し切ったときのみ。
一緒に遊んでくれる人はいない。
人はたくさんいても、俺を見守る人だけ。
「美咲、集中しろ」
「ぅあっ!」
ズプンと勢いよく腰を打たれ、意識が現実へと引き寄せられた。
身体を仰向けにされ、俺はセラと向かいあう。
「せ、ら…」
「どうした?」
「…夜まで寝たいから、もっと強くして」
「仰せのままに」
それからセラは俺の願い通りに抱いた。
目覚めたときには日が暮れ、立食パーティーの時間が迫っていた。
*****
きらびやかな会場にセラと入ると、父がすぐに気づいて俺を抱きしめる。
その後ろには俺の二人の兄もいた。
鹿目グループの総帥である父は、日本だけでなく世界をも動かす力のある経営者。
敵も味方もたくさんいて、その息子である俺は自由を許されない。
「お久しぶりです、父様」
「久しぶりだね。元気だったかい?」
「はい。会えることを楽しみにしておりました」
「私もだよ。それじゃあ私は挨拶に行ってくるね」
「はい」
父との思い出はあまりない。
幼い頃よりも、大学生となり、成人した今の方が会うことが多いくらいだ。
だけど誕生日には電話をくれたり、手紙をくれたり、プレゼントはもちろん欠かさない。
親からの愛に飢えたことはないけど、海水浴場にいた家族連れのように遊んだことはなかった。
逆に兄たちとは一緒に暮らしていたが、大人になってからは距離ができたため、少し緊張する。
父と別れて残った兄の二人は、俺の頭を撫でたり抱きしめたりしてきた。
「久しぶり~、我らがエンジェル美咲!」
「あー可愛い。もう癒しだよ。癒し!」
「ハル兄様、ナツ兄様…」
くすぐったさに身をよじった時、両側で兄が驚きの声をあげる。
「なっ!?」
「美咲!?」
「え? なんですか?」
何に驚いているのかわからずに見上げれば、二人とも怖いくらいに笑った。
「なんでもないよ~。一緒にお兄ちゃんたちと挨拶に行こうね~」
「はい…?」
「美咲のことは、あの男ではなく俺たちが守るから安心しろ」
「あ、ありがとうございます…?」
「兄ちゃんにお礼を言うときはそうじゃないだろ?」
「だ、大好きです。ハル兄様、ナツ兄様」
「俺もだよ!」
「ああ、大好きだ」
うーん…?
相変わらず独特なお礼の仕方だ。
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