ケダモノスイッチ
同じ大学に通う誠也(せいや)と深晴(みはる)は、都内の1LDKで同棲中。見た目も性格も対極的な二人が交際していることを、彼らの周囲は誰も知らない。大人しそうでいて実は性欲の強い深晴にねだられて、今夜はバスルームですることに。途中までは深晴に気圧されていた誠也だったが、雄のスイッチが入ればそこからは怒涛の展開で…
「ねぇ、誠也」
「なぁに?」
「…暇」
「ごめんね、もうちょっとで課題終わるからさ」
都内の1LDK。この部屋に住む誠也と深晴は、同じ大学に通う同級生。学部は異なるため大学で顔を合わせる機会は少なく、理系学部に在籍する誠也の方は課題に実習に忙しく追われる日々だった。
「そういえば。明日、バイト無しになった」
「じゃぁ、どっか行く?」
「午前中は、雨っぽいから。誠也と家でのんびりしたい」
ルームシェアという名の同棲。元は同じ高校出身で、大学進学後まもなく二人は交際を始めた。誠也も深晴も自分たちの関係を周囲に明かすことはなく、表向きは単なるルームメイトとして二年以上暮らしている。
「誠也、課題終わったら寝ちゃう?」
「いやまだ、寝ないよ。シャワーも、浴びたいし」
「…一緒に浴びよう?」
ペンをはしらせていた誠也の手が、やっと止まった。課題に区切りがついたことを確認した深晴は、待ちくたびれたとばかりに、誠也の下半身へゆっくりと手をのばす。
「深晴ッ…こ、ら…」
「もう1週間以上、してない」
「僕が実習続きだったからね」
深晴は髪色こそ明るいが、良くいえば大人しくてマイペース、悪くいうならば非社交的で近寄りがたいタイプ。ぱっちりした目元を筆頭に容姿は整っているものの、学部では一匹狼状態だった。対して誠也は黒髪眼鏡の中肉中背、優しくて地味で凡庸。そして、年齢性別問わず好かれるような人当たりの良さがあり。誠也と深晴は対極的で、だからこそ誰も二人の親密さには気付いていなかった。
「ンッ、ン…」
「ねぇまだ…深晴…シャワー、浴びてから」
「やだ、キスもっと」
周囲からは恋愛やセックスに丸っきり興味が無さそうに思われている深晴だが、実際のところ彼の性欲は強い。今だって誠也の眼鏡を奪い取り、噛み付くようなキスを繰り返して舌を押し付けている。家の中では誠也へのスキンシップも多く、要求は割とストレートに伝えることが多かった。
「俺が脱がして、洗ってあげる」
「待って深晴…ねぇ、もう、君はさぁ…」
「えっちな気分になった?」
「なってるよ…なってるけど」
机に広げたままの教科書やノートを片付けるのは諦めて、誠也はまとわりつく深晴ごとバスルームへ向かった。大学では乏しい深晴の表情が、二人きりのときにはころころ変わって豊かに色付く。それが可愛くて仕方がない故に、誠也は深晴のおねだりには結局いつも応えてしまうのだ。
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