捕食対象は愛されて (Page 3)
「い、痛い!!ごめんなさい、ごめんなさい…!!」
「ちょっと舐めただけでも美味いなァ…おまけに俺を誑(たぶら)かすプリプリの尻ときた!命乞いしたって無駄だぜ?これから羽を1枚1枚むしってやるからよォ…耐えがたい痛みを味わえ…恐怖で歪む可愛い“お顔”は最後に丸飲みしてやるからなァ。安心しな、俺は礼儀正しいタカだ。食べ残しなんてしねぇから…跡形もなくペロリと平らげちまうぜ?」
「嫌だぁ!!」
口に含んでいた糸ミミズや小虫をすべて吐き出し、自分より遥かに大きな相手から逃げ出そうと後退(あとずさ)りする。何度謝れば許してもらえるのだろう。威圧を掛けながらジリジリと迫る相手に、身体中の震えが止まらない。彼に見つかった瞬間に鋭い爪で裂かれた脇腹からは、赤い雫が滴って視界は霞んでいたし…草むらには僕がタカさんと揉み合いになった際に抜けた、泥まみれの羽が転がっていた。
(タカさん相手じゃ、カモさんやサギさんだって助けてくれないよ…。僕、こんな綺麗な場所で噛み殺されちゃうんだ…)
僕だって自然の摂理くらい理解できる。お腹を空かせた僕が飛び回る虫をエサとして食べることと、タカさんが僕を食べようとしていることは大して変わらない。きっと抜け駆けした僕を弔う仲間は現れないだろう。
「にしても小せぇ翼だなァ…骨が透けて見えそうだ。こいつをポッキリ折っちまえば…そのオクチから甲高い悲鳴が聞けるか?」
(怖い、怖い、怖いよぉ――!!)
翼を支える尺骨(しゃっこつ)を咥えられ、無理矢理捻られてしまえば…ビキビキとあらぬ音が響き、激痛で目を瞑る。しかし、僕のこの動作が猟奇的なタカさんをさらに昂らせてしまったようだった。
「おォ、その顔、その顔!!死に直面した気分はどうだ?テメェは俺の縄張りを荒らした罪鳥だからなァ…ただ嬲(なぶ)ってエサにするだけじゃ、気が収まらねぇ。抵抗できねぇ瀕死状態のスズメの極小アナルで、性欲処理するってのも悪くねぇかもな!!」
(え?)
思考が追いつかない僕をタカさんが組み敷き、腰と腹部を密着させる。そして僕に最後の選択を迫った。
『世間知らずのテメェにチャンスを与えてやるよ。羽を剥かれながら食い殺されんのと、テメェのアナルを使って、俺が満足するまでヤるか…どっちか好きな方を選べ。性欲処理に付き合ってくれんのなら、命だけは助けてやるよ』
(タカさんとHしたら、僕…助かるの?)
それは悪魔の声。僕は単純に、死にたくなかった。ドジだし、マヌケだし、群れには溶け込めないし、長老の教えにも背いてしまった――できそこないのスズメ。生きていてもこの先、楽しい出来事が起きる確証なんてないけれど…僕も自然界で生きているから、彼に嬲り殺された仲間の死骸を目にしたことくらいある。それはとても惨くて、悍(おぞ)ましくて、吐き気がするくらい残酷な有様だった。心臓が止まる瞬間まで“死”は訪れない。それまで羽という羽をむしられ、嘴で突かれ続けるなんて僕には耐えられそうにない。
だから――。
「…タカさん、僕のお尻…使って――」
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