捕食対象は愛されて (Page 4)
僕は彼に総排出腔を捧げる決意を決め、ぐっと腰を突き出した。ズチュッという汚れた水音と共に、上に乗っかっているタカさんから全体重を掛けられ、彼の精液で濡れたアナルが僕のアナルと深い口づけを交わした…そのとき。
「カァーッ!!!」
(な、何…?)
雷鳴のような叫び声が聞こえたかと思うと、僕は真っ黒な影に身体を包まれ、長い草が目立つ茂みへと引きずり込まれていたのだ。
「クソッ…“カラス”の野郎、善鳥ぶりやがって…」
すぐ傍で口汚く罵る声が聞こえる。タカさんの言葉により、僕も影の正体がわかってしまったんだけど…驚きの声をあげそうになる寸前、カラスさんは温かな翼で僕の嘴を押さえた。
『もう怖くねぇからな』って…。
*****
(あのときはケガをして弱っていたから、てっきりカラスさんも僕をエサ代わりに食べようとしているんだと思ってた…)
「どうした、飯が足りなかったのか?デザートにリンゴがある…お前、好きだろ。小さく砕いてやるから待ってろ」
「お、お腹いっぱいだよ…!!」
カラスさんはカラス界一…いや、鳥界一優しい。弱きを助け、強気を挫(くじ)くを実践している彼にとって、タカさんは悪しき鳥であったらしい。あの日、偶然近くでゴミ漁りをしていたカラスさんは、タカさんが不審な動きをしていることに気づき、僕とセックスしている光景を見てしまったんだって。
タカさんのような猛禽類相手に言いなりとなり、小鳥が操(みさお)を捧げる理由はひとつ――脅されているから。カラスさんはそれを悟った上で僕を救い、『行くアテがねぇんなら、俺の巣にくるか?その傷じゃ猫にでも食われちまうだろうし…』なんて自分の巣へ連れ帰ってくれたんだ。
狭い巣の中で2羽っきり。ほんの僅かな期間で友情は愛情へと変化を遂げていった。
*****
「人間ってホント羨ましいよな…」
「カラスさんってば、またその話?」
僕と愛を確かめ合ったあと、カラスさんはいつもしかめっ面をして物思いに耽る。何を考えているのかと聞いてしまえば、それはいい歳をした成鳥が話す内容ではなかった。
「お前もあのギラギラした建物のベランダから、こっそり中を覗いてみろよ…人間のペニスって立派なモンだぜ?俺の好物、ウインナーの何倍も太いんだ!メスのもじゃもじゃを掻き分けて捩じ込むだろ。そうすっと、ベッド上でカーニバルが始まるんだぜ?ユサユサ腰振って、飛んで、跳ねて、でんぐり返し!!フィナーレには水しぶきが上がるんだ。今日のオスは最後にウインナー、食べてもらってたっけ…あー、俺もでっかいペニスがほしい!!」
カラスさんは僕の食事を探しに行くと、必ず通り道であるピンクのライトに照らされた建物に立ち寄る。そこで人間同士の激しいセックスを観察しては、僕に目撃した行為の一部始終を語るのだ。
僕は、人間のメスが絶頂に至る様子を喜々として話すカラスさんに、ヤキモキしてしまう。
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