僕と僕の彼氏の秘密
アイドルを卒業することにした。きっかけは僕の面倒を常に見てくれるコウジくんの「一緒に俳優やらない?」の一言だった。マンションを買ったのもそう。彼の言う通りにしていればなんでも上手くいく。今後はインタビューも彼に同席してもらおう。
僕らのアイドル生活も終了だ。
キラキラの衣装を身にまとったまま、汗まみれの楽屋裏で、
「一緒に俳優やらない?」
って言われたときは、何を言っているのか理解できないくらいに驚いた。
ほら、でもさ、僕は年下のコウジくんについていけば、いつもうまくいく。
マンションを買うときだってそうだ。
僕があまりにもだらしないから、通帳などのお金の管理は彼に任せてしまった…。
周りの人間は「え?一緒に住むの?」とか
「え?お金の管理はコウジくんが?」
なんてことは全く言われなかったのが幸いかな。
僕らの関係があまりにも密接だからか、僕がのんびりなせいか、
コウジくんと僕と同じアイドルグループだったメンバーには
「あ、いんじゃない?」
「そうしたほうが、安全だと思うよ。」
なんて言われて…。
年上の僕よりも仕事もできて、人気もあって、歌も踊りも上手だったコウジくんにはとことん敵わないなぁ。とも改めて思った。
まぁ、今は夜も敵わないんだけど…。
*****
あれはマンションを買うきっかけになった話なんだけどね、
僕は当時ファンの子たちに何故か住んでいる場所がばれてしまって、
新しい物件を探さなきゃいけなくなって…。
「困ったなー」って、夜に一人で物件を探していたんだよね、インターネットで。
で、インターホンが鳴るもんだから、びっくりしてモニターを見たら
珍しく酔ったコウジくんが映ってて
―――アレ?いつもなら合いカギで入ってくるのに変だなー?
なんて思って鍵を開けたら倒れ込むように僕に抱きつくんだよ。
「新婚さ~ん!」
なんて陽気に言うものだから、
僕もついつい口が滑って、
「おかえりなさいませ、旦那さま~」
なんて回答したら、唇を奪われてズルズルと玄関からダイニングまで。
舌が入ってきてそのまま数秒、絡めあってしまって。
そこまでは、まだ、全然、よかった。
たまーに番組でもキスくらいはするから。
でも、その、キスが、あまりにも濃厚で、長くて、上手で、
僕の腰が砕けてしまった。
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