満月の夜、秘密のお散歩
同じ大学で同じ学部の二年生、バイト先こそ違えど住まいは一緒。周囲にはルームシェアをしているただの友達と称しているが、実は付き合っている東海林誠(しょうじまこと)と筑波浩司(つくばこうじ)。彼らは周期的に、隠れた楽しみがあった。それは誰にも知られざる二人だけの歓喜。今夜、待ち焦がれた月の満ちた夜、暗がりの中で明かされる二人の秘密とは…?
月が綺麗な夜の誰もいない公園から神社へ向かう道。普通の足音と、何やら動物が歩くような音。
しかし、犬や何かにしては大型のものだった。
木々の間から差し込む月明かりに照らされたのは、リードを持って歩く青年と、その先に首輪を付け、裸にシンプルなエプロンで四つん這いに歩く青年。
臀部には尻尾付きのアナルバイブが刺さっている。
首輪に繋がれた青年の顔はどこかうっとりとして、四つん這いでありながらもその足取りは楽しげなものに感じられる。
「お前も好きだよな…誰かに見られたらどうすんだよ」
「ぁ…へーき、こんな夜中の不気味な公園、んっ、誰もいねぇって」
溜息混じりに呟く東海林の声に反して浮かれた声で筑波は答える。
バイブの微かな振動音が暗がりに響いていた。
「それに…なんだかんだ言ったって、は、ぁ、最後には誠もノリノリじゃん」
筑波の声に東海林は反論出来ずに、代わりにまた一つ溜息で返した。
*****
とある大学の敷地内。緑の生い茂る中にある校舎は木漏れ日に照らされて、穏やかな昼休み。
賑やかな学生の声が響く中、学食へ向かう廊下で二人の男子学生が楽しげに話している。
「な、な、東海林、今日は何食う?」
明るい金に近い茶髪をウルフカットにした裾の髪を歩くたびふわふわと揺らしながら筑波が尋ねる。
「んー、肉の気分。生姜焼き定食だな」
少し悩んだ末に答えるのは、染めた事のない黒髪をツーブロックにして前髪を少し長めに垂らした東海林。
「生姜焼きか~、俺は何にしよっかなっと」
そんなやり取りをしながら食券販売機の列に並び、東海林は前言通りに、そして筑波は迷った末に鮭の塩焼き定食にした。
それぞれカウンターで料理を受け取ると、空いている座席を探して食堂内を歩き回り、不意に筑波は見知った顔を見かけて駆け寄る。
「ゆーかちゃん、かなえちゃん、ココ空いてる?」
見かけたのは二人と同じゼミの椎名由香とその友人の美澄かな恵。
「あ、うん、空いてるよ。ちょっと待ってね」
美澄が答えて向かい合って座る二人の女子生徒は、荷物を椅子から退けてトレーも動かし、二人が座れるスペースを作る。
「ありがとな」
少しぶっきらぼうにも見える礼を述べて空けてくれた場所に東海林が就くとその向かいに筑波が座った。
「ありがとね」
筑波も二人に軽くウインクして見せるが早いか、食事の箸を進め出す。
「ちゃんといただきます、くらい言え」
東海林に小言を言われても筑波は何食わぬ顔で味噌汁を啜る。
そんな様子にも慣れっこなのか小さく溜息をつくだけで小声で挨拶を口にすると箸を取り、添え物の野菜から食べ始める東海林。
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