カンチガイ恋愛 (Page 3)
「…ん? ちょっと待て。不倫? 誰と誰が?」
「俺の口から言わせるつもりですか? 話の内容でわかるでしょ」
「全然わかんねえよ! アイツが不倫? 誰とだよ!」
「もういいです」
「よくねーよ!」
「だったら琉人さんを抱かせてください。別れさせますんで」
「はあ? なんで俺が…」
「じゃないとうわさを流しますよ」
佐久間は自分の口元を舐めると、男の目で俺をじっと見た。
「社長が男と不倫をしているってうわさをたてますけど…いいですか?」
「はあ? おまっ…もうっ!」
「ホテルはとってるんで安心してください」
なにをどう安心しろってんだよ!
つーかなんで俺が社長のために体を開かなきゃなんねえんだ。
*****
シャワーの音を聞きながら、俺は窓辺で社長に電話をかけた。
夜遅くにしつこく電話をつなげていると、眠そうな声が耳に届く。
『こんな時間になんだよ…』
「おい、不倫してるってのはなんのことだ」
『あー…? 不倫? え、誰が?』
「お前だよ! 聞いてないんだけど!」
『そんなわけねえだろ。あー、ビビった…。つーか俺がそんなやつに見えるってか』
「そういうわけじゃないけど…。うわさを流すって脅されて、関係を…強要された」
『いやいやいや逃げろよ! うわさが流れたほうがマシだって!』
「そういうわけにいかないだろ! それにアイツは…」
『え、社員? なら今すぐクビにすっから言え』
「…優秀だからクビにはしないでくれ」
『あー…っと、もしかして『佐久間優』とかってやつじゃね?』
さすがは社長。社員のことならなんでも知っている。
俺はシャワー室に目を向けながら肯定をした。
「そうだよ。だから電話して厳重注意でも…」
『おう…明日なぁ…。とりあえず今日は俺のために抱かれてくれ。もう眠い。おやすみ』
「なんでだよ!」
『愛してるよ、俺の琉人。お前もはやく寝ろよ』
「だから今──」
プツッ、プープーッ。
(あ、あいつううううううう!)
なんで俺がお前のために抱かれなきゃなんないんだよ!
でもやっぱ佐久間ならクビにできないよな。
それくらい佐久間は優秀で、他社からも声がかかることがある。
「あのルックスで仕事ができれば当然か…」
「なにを一人でブツブツ言ってるんですか?」
「おわっ…!」
半裸でバスタオルを首にかける佐久間に、俺の心臓がドキッと高鳴る。
スーツに隠れて気づかなかったけど、腹筋が割れててキレイな身体をしている。
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