月曜日の憂鬱 (Page 3)

「…氷山さん…なんで…」
「…っ…」
「なんで、勃ってるんスか」
「…！！」

俺が直球でそう訊くと、氷山さんは目を見開く。息を荒くして、唇を噛み締めている。
本当に嫌ではないと、その反応からしてすぐ分かった。

気を良くした俺は、膨らんだ氷山さんの股間をさわさわと撫でた。こんなこといけないと頭では分かっていても、完全に熱に浮かされていた。

「あっ！大沢、なにす…、あ、う」
「すごい、氷山さん、そういう声も出るんだ」
「やめろ、お願いだから…っ、あっ、ん！」
「…普段澄ましてるくせに男に触られて喜んじゃうだなんて、みんなが知ったら驚くだろうなぁ」

その時だった。
あまりにもひどい俺の言葉を聞いて、驚いたような悲しいような顔をした氷山さんの目から、大きな涙が溢れたのだ。
それを見て、俺はやっと我に還り自分が彼に放った言葉の意味を思い返してひどく後悔した。

「…うっ…」
「…す、すみません…俺、ひどいこと言って…！どうかしてました…」

泣きじゃくる氷山さんを目の前にして、俺は狼狽することしかできなかった。
そんな俺を見上げ、彼はゆっくりと口を開いた。

「…いや、お前の言う通りだよ…」
「え…？」
「…俺、お前に少し触られただけで、こんな風になって…っ、どうしようもない…」
「…」
「大沢、俺…お前のこと、ずっと好きだった…」

彼は腕で顔を隠し、小さな声でそう言った。
思わぬ告白に驚きつつ、俺の脳裏には先日菅野さんから言われた言葉が浮かんだ。

ーー氷山さんが、俺に期待していると。
期待どころか、どうやらそれ以上だったわけだけど。女の勘は侮れない。

「気持ち悪いよな…すまん。俺、こういう性格だから…どうしても意識してしまって…。それで、ああいう態度しかとれなかった」
「氷山さん…」
「それに、男に好かれるだなんてお前も気持ち悪いだろ？諦めるつもりだったんだ。でも、言うなら今しかないと思って、つい…」

「…」
「…と、とりあえず、すぐ帰るから！大沢、ちょっと退いてく…」

不器用なりにも必死に自分の思いを伝える氷山さんのことを初めて愛おしく感じ、俺をやんわり退けようとするその手を掴んでキスをした。

酒の匂いはしたけどそんなことは気にならないほど、俺も必死だった。
思えば人とキスをするなんて久しぶりだったし、それがまさか男相手になるとは思わなかったけど、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。