そろそろ気付いてよ、この関係いつまで続くの?
入社3年目の相原は新卒の河野の教育係を任されることになる。河野はその人柄から、瞬く間に社内の癒しキャラに。そんな河野と誰よりも長く過ごしている相原は、河野に特別な感情を抱き、アピールするも空回り。ねぇ、そろそろ気付いてよ…。
今年も春が来た。
俺ももう社会人3年目…なんと、新卒の教育係に任命されてしまった。
正直、人と密接に関わることが苦手なので、不安しかない…。
だが、彼をひと目見たときから、『あ、大丈夫かも、俺頑張れそう』そう思った。
「はじめまして!新卒入社の河野です!頑張ります!ご指導よろしくお願いします!」
びっくりするくらい大きな声と、ハキハキした挨拶…笑顔がまぶしくて直視できない…。
若くてやる気に満ちた青年、第一印象はそんな感じ。
この子となら俺も一緒に頑張れそうだ、と思った。
しかし河野は天然なのか世間知らずなのか…まぁやらかすのなんの。
「せんぱーい、ファイルの中身がこぼれちゃいましたー…」
雨に濡れた子犬のような顔で俺を見てくる…。
かわいいがこれにはため息も出てしまう。
はぁ…なんで留めてあるファイルが開くんだよ…。
「はぁ…早く一緒に拾おうか」
こんな河野を一から俺が育てていくのも悪くないなと、と母性なのか父性なのか…謎の何かが芽生え始めていた。
頼れる先輩に、俺はなる!!
*****
入社1ヶ月を過ぎた5月のある日。
俺は初めて河野をサシ飲みに誘った。
「おごってやるから飲みに行こうぜ!」
これぞ、先輩の常とう句。
俺も言ってみたかったんだよね。
この日のためにオシャレな上司に店を教えてもらった。
俺もオシャレな先輩に見られたいからね!
その店はモダンな雰囲気漂う、静かな居酒屋、個室もあるが、値段もそんなに高くない。
すごくいい店を教えてもらったなぁ…としみじみ心の中で上司に感謝する。
いざ飲み始めると、河野は酒に弱かったのかすぐに顔が赤くなり、ニコニコと楽しそうに笑って俺を褒め始めた。
「先輩ってポンコツな僕にも優しくて嬉しいですー!」
「今日もこんなオシャレなお店知ってるしー!」
「またサシ飲みしたいですー!」
「先輩ってこんな優しくてオシャレで…もし付き合ったら絶対楽しいですよねー!」
「なのに…なんで彼女いないんですかー!?」
河野はニコニコ楽しそうに、一方的に俺を褒めまくる。
そう。今年はスーツも新調したし、ネクタイもシャツも毎日コーディネートに悩み、苦戦している。
でもそれはね。
全部、君のせいなんだよ?河野くん。
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