専属執事に願い事 (Page 3)

ついに明日は結婚式。

午前中に行われる結婚式の後、婚姻届を提出し、正式に僕は彼女と結婚する。

当日の最終打ち合わせを終え、両親に祝われながら夕食をとった。

夕食後、一人、自室のベッドに腰掛けていると、部屋をノックする音。

「どうぞ」

「失礼致します」

入ってきたのは成瀬だった。

「柊哉坊ちゃん、先日の答えを伺いに参りました」

「そうだと思った」

銀縁のメガネの向こうにある目が楽しそうに細められた。

普段クールなくせに、こうして僕の前で見せる柔らかい笑顔に、僕はどうしようもなく胸がざわつく。

「考えてた、ずっと」

「ええ」

「成瀬は昔から僕のことをなんでもわかってるから、きっと嘘をついて隠したところでバレてしまうだろうな」

きっと、すべてを伝えたところで、成瀬は変わらず傍にいてくれる。

「成瀬、僕はずっとお前のことが好きだった」

やはり成瀬はわかっていたようで、笑みを浮かべてコクリと頷いた。

ひた隠しにしてきた僕の想いを伝えられて、少しスッキリした。

「このために僕に言わせたんだな」

「このため、とは?」

「気持ちを伝えて、スッキリして、ちゃんと明日の結婚式に備えられるようにするためなんだろ?」

「はい?」

「大丈夫、ちゃんと気持ちの整理は…」

そう言いかけた瞬間、トンと胸を強く押された。

「っ!?…」

他に誰もいない部屋で押してきたのは成瀬しかいない。

けど、成瀬とは思えない手荒なやり方で、僕はベッドに倒れ込んだ。

「成瀬?…」

何をするんだと見上げると、成瀬の顔がすぐ近くにある。

「っ…」

僕の顔のすぐ横に両手をつき、まるで僕を押し倒しているかのような体勢の成瀬にうろたえた。

「決してあなたの望まない結婚へ意識を向けさせるためではありません」

「じゃあ…どうして…」

「私を好きであるあなたが、私に望むのはなんですか?」

成瀬に望むこと…そんなの…。

「大丈夫です、ほら口にして…私もあなたと同じ思いだから」

「っ!!」

本当に…本当にいいのか?

「成瀬…」

僕の望むことは…。

「好き…愛してるっ…成瀬のものにしてっ」

「よく言えました」

そう言って、成瀬はそっと僕の頭を撫で、耳元へ唇を近づけた。

「ずっと愛してました…あなたを私のものにしたいとどれだけ願ったことか…」

吐息が混ざる低音に、ビクビクと体が反応する。

「おや…柊哉坊ちゃんは敏感ですね」

「んっ…」

我慢できずに漏れた声に、成瀬がふっと笑う。

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