廃墟探検~強姦魔地縛霊ハ愛ニ執着スル~ (Page 6)
*****
「俺ガ地縛霊トナッタ理由がワカッタカ…“源人”――全部オ前ノセイダッ!」
(竜の奴…源人の裏切りがよっぽどショックだったんだな…)
源人と無理心中を図ろうとした竜。
新しい恋人と結託した彼から返り討ちにされるのは自業自得ともいえるだろうが、憐れで気の毒に思えてしまう。
事の発端(ほったん)は源人の浮気だというのに――彼は今も竜が地縛霊となり成仏できぬまま現世を彷徨(さまよ)い続けていることを知らず、あのおやじと密会しているに違いない。
「――なぁ、竜。お前ががっついてばかりいるから、源人って奴も逃げちまったんだぜ。アイツはお前からほしい言葉を貰えない、なんて言ってたけど――竜は気持ちを表現するのが下手なだけで、源人のことが本気で好きだったんだよな。痛みを伴うセックスだって、源人が悦ぶから…浮気性のアイツが自分から離れていかないように身体だけでも繫ぎ止めておこうって…本意ではないセックスをしてたんだろ?」
「グッ…ソ、ソレハ…“オ前”ニ関係ノナイ話ダ…」
竜は初めて俺を源人と呼ばなかった。
最初から俺が探し求めていた相手ではないことも、わかっていたのだと思う。
彼の記憶を覗き見たことにより、竜に対する恐怖心が薄れていく。あの日――竜が無理心中を図ろうとした日だって、食卓にはうまそうな手料理が並べられていたではないか。それは当然、家に寄りつかなくなった源人を想って…一縷(いちる)の望みを掛け、コイツが作ったに違いない。
彼は優しい男なのだ。
「お前…源人に会えねぇと、この土地から離れられねぇんだろ?このマンション、もうすぐ壊されちまうんだ。このままじゃお前の魂だけが残されるんだぜ?無理心中なんて馬鹿なこと考える前に、源人と別れりゃよかったんだ。竜の方が、人生損しちまってんじゃねぇかよ」
自身の声が段々と細く、掠れていく。
竜はなぜ俺に辛い過去の記憶の断片を見せたのだろうか。俺が憎き源人に似ているから、代わりに復讐してやろうという気持ちもわからなくもない。だが、だとしたら犯したその手ですぐにトドメを刺せばよかったのに――惨めで情けない己の記憶を俺に見せてきたのはなぜだろう。
竜は長年の間、この場所で自身を責め続けたに違いない。自分が愛情深く源人に接していたのなら、未来は変わっていたのにと。
竜が死後も思い悩んだであろう苦しみを思えば、自然と涙が頬を伝った。
「…ナゼオ前ガ泣ク…」
「…そんなの俺にもわかんねぇよっ!ただ竜が…竜の魂だけがここに取り残されてると思うと悔しくて…」
まだ源人と俺を重ねているのか、竜は氷のように冷たい手の平で俺の涙を拭ってくれたようであった。すると――空気同様、無色透明の存在であった竜の姿がハッキリと視界に映ったのである。
最近のコメント